出来ちゃった恋愛
『我慢してる』ってのは禁句のように口にしなかった言葉だと思う。



サキの頑張りも知ってるし、今までの人生をかなり変えてしまったこの結婚で『我慢』してるのはあたしだけじゃない。



だから口には出来なかった言葉を、サキはサラッと軽く述べた。



「サキは…結婚したの後悔してる?」

「なんで?今の俺はね~、ユズとチビ太養うために働くのが楽しいの」

「我慢してるじゃん…」

「チビ太とか、その後に産まれるチビ子がデカくなるまでだから。手が離れたら、出来なかったことをユズとしたいの~」



お酒のせいかな…。



サキがいつもより熱い。



その熱を背中に感じ、呂律の微妙な口から出た言葉に胸が温かくなった。



「チビ子も産むの?」

「当たり前。やっぱふたりか三人は欲しいとこだね」

「そんなにいたらきっと楽しくなるね」

「うん、だからユズとふたりで我慢してく。いつか旅行に連れてくから…」



妊婦は本当に情緒が安定しない。



泣きそう…。



< 236 / 440 >

この作品をシェア

pagetop