出来ちゃった恋愛
その日、ユズと別れてから家に帰ってただ落ちた。



思い出すのは愛の笑顔と、さっきの涙。



ユズに結婚を申し込んだことは後悔してない。



なんで俺ってひとりなんだろ…。



俺のクローンでもいれば、ユズと愛、両方と幸せになれたかもしれない…。



とにかく愛を泣かせて悲しませたのは事実で、俺の中で初めて感じた罪悪感だった。



女なんかどれだけ泣かせてきても気にもしなかったのに…。



「咲都?ごはん食べた?」

「食ってねぇよ…」

「遅くなっちゃったからヤキソバでいい?」

「食欲わかねぇ…」

「そう」



おかんが深く追究して来なかったのは有り難かった。



俺を見守ると言ったおかんは、きっと寛大な心の持ち主なんだと初めて気付かされた。



好きだった愛と別れ、心の中にポッカリと開いた空洞。



愛が存在していた部分が見事になくなってしまった…。



好き…だった。



好きだったんだ。



過去形にしなきゃいけない。



俺にはやるべきことがまだまだある…。



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