青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「ご、ご、ごめんなさい。あの、自己防衛が働いて……無事ですか?」
身悶えている様子からして、無事じゃなさそう。
ですよね、俺の通学鞄には教科書等がひしめき合っているので重量感たっぷり。
投げられたら凶器にだってなっちゃうんだぜ!
呆気に取られていた荒川は、「な。ナイス」俺の行動に大声を上げて爆笑。
イケメン不良くんはどんな顔をしても格好良いらしい。
爆笑するお顔も女子達が見たら黄色い悲鳴を上げるに違いない。羨ましいな、ルックスの高い人は。
なんて、思っている場合じゃない。
絶対に許してもらえないと悟った俺は通学鞄を取りに行くためにチャリを一旦その場に置き、素早く鞄を回収。
次いでチャリに跨り、
「荒川乗れ!」
ペダルに足を掛けて後ろに乗れと指示する。
軽く瞠目する荒川。
だけどすぐに綻んでチャリの後ろに乗ってきた。
「一人で逃げることもできるだろうに。節介な奴」
ははっ、そうできたらしたいっつーの。
だけどな、そんな薄情なことできるわけないだろ? 追々のことを考えるとさ!
それにニケツなんて本当はしたくない。
今の時代、ニケツは罰せられるんだぜ?
でも、交通違反と命。
どっちが大切かってそりゃあ命だろ! 自分イチバンだろ! 俺は自分が可愛いよ!
「いいか、しっかり肩に掴まっていろよ。少々運転が荒くなるから」
言うや否や俺はペダルを踏んでチャリをかっ飛ばした。
人間二人分の重みがペダルにのし掛かってくる。
けど重みを感じる余裕はない。
なんでかって、あいつが追い駆けて来ているからだよ! チャリ相手に根性を見せてくる不良さまは、俺達を捕まえようと全力疾走。
荒川は後ろを振り返って、「頑張るなあいつ」能天気に笑っていた。笑い事じゃないぞ、この状況。
くそう。単にチャリを走らせているだけじゃ、捕まる可能性があるな。確実に撒かないと。
「荒川。路地裏に入る。急カーブにご注意を!」
「うをっつッ!」
右にハンドルを切って路地裏に逃げ込んだ俺は、不良を撒くためにチャリの速度を上げる。
「スッゲェ」
こんな細い道を難なくチャリで通れるなんて、荒川庸一は褒めを口にした。
嬉しいけど、できることなら別の場面で褒めて欲しかったんだぜ!