青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



不機嫌そうに答えるヨウに、「ダッサー!」声を上げてワタルさんは大笑いした。


ワタルさん、スゲェよな。

こんな状態のヨウを笑い飛ばせるなんて。


机に通学鞄を置きながら二人のやり取りを見てたら、ブレザーを軽く引っ張られた。


「ちーっす、ケーイ」


満面の笑顔で挨拶してくるのは弥生だった。

弥生の隣には銀に髪を染めているハジメが座っている。


「ケイ、昼休みぶり」


同じようにハジメが柔らかな表情を作って挨拶してきてくれた。


ハジメ。

本名は土倉(つちくら) 肇(はじめ)。


俺と同い年で、一ヶ月前に大怪我まではいかないけれど廃工場で不良達に袋叩きにされて怪我を負ったヨウのダチ。

俺と同じようにあんま喧嘩はできない。


だから初めてハジメと顔を合わせた時、ワタルさんが、


『フルボッコにされた同士だねねねねん!』


余計なことを言ってくれた。

マジあれを言われた時、俺もハジメも引き攣り笑いしかできなかったぜ。

ワタルさんにとっては笑い話でも、フルボッコにされた俺達にとっちゃゼンッゼン笑えなかったって。

ちなみにハジメと弥生と俺は同じクラスなんだ。


弥生は同じクラスだって知っていたけど、まさかハジメまで一緒にクラスだとは思わなかった(不良と同じクラスかよ! って嘆いたことは俺だけの秘密だ)。


二人とも不良なだけあって学校をよくサボる。


ハジメは今の今まで怪我してたから学校に来れなかったみたいだけど、怪我が完治してから俺達とよく体育館裏でふけているよ。今日も一緒にふけてたし。


弥生は学校をよく抜け出して他学校に通っている響子さんやココロと一緒にいるみたい。三人はスッゲェ仲が良いってヨウから話を聞いた。


あ、俺達のところに来る時もあるんだぜ。


今日も二時限目まで俺達と一緒にいたしさ。


ヒトコトで言えば弥生って自由奔放な性格の持ち主だ。


ヨウと関わりを持たなきゃ知り合うことも無かっただろう(是非とも知り合いたくは無かったよ)二人に挨拶をした俺は、席に着いて抱いていた疑問を投げ掛ける。

「なあなあ。どうして俺達、呼び出し喰らったか知っているか?」

「わっかんないんだよね。私……生徒会室に来てくれって言われただけだし。ハジメは分かる?」

「同じく来てくれって言われただけだからなぁ」


「そっかぁ……うわッツ!」


横から胸倉を掴まれた! 嫌な予感がするぜッ。

顔を上げれば、青筋を立ててメッチャ苛々していらっしゃる……。


「ゴラァア。覚悟はいいかクソ地味野郎が」


嗚呼、やっぱりお前か、タコ沢。 

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