青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
タコ沢のガンから逃げながら、心の中でめちゃめちゃビビッていると大袈裟な咳払いが聞こえた。
俺を色んな意味で助けてくれたのは、俺達を呼び出してきた須垣先輩だった。
「みんな座ってもらえるかな。これが終わったら廊下で好きに暴れてもらっていいから」
ニコッと笑ってくる須垣先輩。
あくまでも爽やかに笑ってくる須垣先輩になんかまたひとつ、ヤーなカンジを覚えた。
須垣先輩の指示で俺達は着席する(良かった、タコ沢の手から逃げられたヨ!)。
改めて生徒会室を見渡せば、俺達に目の前には須垣先輩や生徒会役委員数名。後は俺達以外誰もいない。
なんか居心地悪いな。
生徒会役委員が俺達を怯えるように見てくるから、これまた居心地が悪い。
まあ俺じゃなくて不良のヨウ達に怯えてるんだろうケドさ。
「さてと」
ニッコリ微笑んでくる須垣先輩が話を切り出してきた。
「全員揃ったところだし話を始めようか。あ、申し遅れたね。僕は須垣 誠吾(すがき せいご)。一応、生徒会長をしている」
ヨウに喧嘩を売るような発言をしてきた先輩は生徒会長だったのか。
まあ、雰囲気はそれっぽいから言われても驚きはしない。寧ろ納得。
軽い自己紹介をしてきた須垣先輩に、俺の隣に座っているヨウが不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「前置きはいいんだよ。さっさと始めやがれ。俺達に何の用だ。クッダラネェことで呼び出したんじゃねえだろうな」
「せっかちな後輩だな。まあ、いいだろう。実はね、困ったことが起きたんだよ」
困ったこと?
俺達はキョトンと須垣先輩を見つめた。
事の始まりは今日の昼休み始まり五分後のこと。
須垣先輩を含む生徒会役委員達は近々行われる総会について話し合いをするため、いつもどおり生徒会室にやって来た。
生徒会室は何事もなく静かに先輩達を迎えてくれた、ようにみえた。
だけど換気のために窓を開けようとした時、先輩達の目にヒビが入った窓ガラスが飛び込んできた。ヒビの入った窓ガラスは一枚だけ。
でも明らかに誰かが故意的にヒビを入れたような痕跡がある。
しかも生徒会室は一階にある。
今朝この教室を使った時はヒビなんて入ってなかったことを知っている先輩達は、この学校の生徒の誰かがやったのだと推測した。
「犯行は一時限目から四時限目の間。ヒビ入っていた窓ガラスのすぐ側に溝があるんだけど、そこの溝に煙草の吸殻が捨てられていたんだ。
まだ真新しい吸殻がね。多分、犯行の時に吸って溝に捨てたんだろうね。困ったものだよ」
浅い溜息をつく須垣先輩の説明に、俺は頭の中で整理する。
生徒会室の窓ガラスにヒビが入っていた。
犯行は今日の一時限目から四時限目の間。
窓ガラスのすぐ側には溝があって、そこに吸殻が捨てられてあった。
吸殻はまだ真新しい。
そして俺達は呼び出された。
つまり俺達、う、疑われてるってことか。
確かに俺達、午前中の授業サボったけど、午前中はずっと体育館裏でたむろってただけぞ! 悪いことしてたっちゃしていたけど、生徒会室付近には一切近寄ってねぇーよ!
須垣先輩の話にワタルさんが困ったように、でもいつものようにニヤニヤとニヤついていた。