青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



「僕ちゃーんたち、容疑者に選ばれちゃったってことかぁー。ビックリマンボー」


「ハァア? フッザけるな! 俺達じゃねえよ!」



ヨウが思い切り机を蹴って須垣先輩達にガンを飛ばす。

生徒会役委員の皆様たちは、すっかり小さくなっている。

殆どの方が俺達の先輩なのに……ゴメンナサイ、気持ちは分かります。不良恐いですよね。俺も恐いですもん。


教師も涙ちょちょぎれになるヨウの怒声にも動じない須垣先輩は、ニッコリと微笑んで机上でに肘をついて手を組んだ。


「決め付けるわけじゃないけれど、君達が一番疑わしい。午前中の授業をサボってたそうじゃないか」

「サボッてはいたけど、私達、生徒会室に近寄っても無いし場所も今の今まで知らなかったし」


反論する弥生に「やってないって証拠は無いよ」バッサリ須垣先輩が言い捨てる。


その言葉に俺は喰らい付いた。


「それじゃあ逆にお尋ねしますけど、俺達がしたって決定的な証拠はあるんですか」

「ケイの言うとおりだよ。僕達がしたって証拠は?」


「っつーか、俺はこいつ等と無関係だゴラァアア! なんで俺まで呼び出される!」


吼えるタコ沢を無視して、俺とハジメは須垣先輩に証拠はあるのかと尋ねた。


「君達はよく授業をサボるそうじゃないか」


生徒会長は笑顔を崩さず答えた。


「君達の身形とイイ、授業をサボることとイイ、度々耳にするヨロシクナイ噂とイイ、疑われても仕方がない要素は沢山ある。
実際、僕等生徒会以外にも事情を知っている先生方は君達がしたんじゃないかって疑っている。まあ日頃の行いが災いしたってことだよ。価値のない落ちこぼれくんたち」 


須垣先輩の仰ることはご尤もだと思う。

堂々髪を染めて服装違反はする。授業はよくサボる。学校を抜け出す。


度々ヨロシクナイ噂を耳にしては頭痛を起こさせる。


日頃から教師の反感を買うような行いをしていたら、そりゃ疑われても仕方がないと思う。


だけど上辺だけを見て“価値のない落ちこぼれ”って言い方はないんじゃないかな。 

ホラ、“落ちこぼれ”って聞いて隣に座っているヨウとか立ち上が……ちょちょちょ! ヨウッ、なんで立ち上がっているんですか。今にも掴みかかりに行きそうだし!


「おや、何か気に食わないことでもあるのかな? 落ちこぼれの荒川くん」


ニッコリと笑って先輩は怒りを煽ってくるし! 須垣先輩、絶対確信犯だろ!

職員室にいた時から不機嫌だったヨウの堪忍袋の緒はそろそろ限界の限界みたいで、目の前の机を蹴り倒して須垣先輩をビビらせるようにワザと音を鳴らして机を踏ん付けた。

生徒会役委員の皆様方は怯え切ってるけど、相変わらず先輩は笑顔を崩さない。色々強いな…須垣先輩。


「黙って聞いてりゃ人を犯人扱い。挙句の果てには落ちこぼれ呼ばわりか? テメェ、舐めてンのか? あ゛?」

「落ちこぼれほどよく吠える。耳障りだ」


毒を含んで言の葉を吐き捨てる須垣先輩、


「ッハ、本当は生徒会役員の誰がしたんじゃねえのか?」


ヨウも負けちゃいない。


「テメェ等がやってねぇって証拠もねぇンだろ」

「話を聞いていたかい? 犯行は今日の一時限目から四時限目の間。生徒会役委員は全員、授業に出ている」


「それは授業と授業の間の休みも含んでの、一時限目から四時限目の間の犯行ってことだろうが。誰だってやれる可能性はあるだろ? 俺達がやったって十分な証拠もねぇくせに決め付けるんじゃねえ。
それともなにか? さっさと犯人を見つけ出して先公どもに好い面でも見せようってか? 生徒会長さまよぉ」


初めて須垣先輩の片眉が微動した。

癇に障ったみたいだ。取り巻く空気の温度が下がった気がする。


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