青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「僕達は決め付けているわけじゃない。ただ一番疑わしい生徒達に目を付けているだけさ」
「だったらハッキリ言ってやるよ。ンな馬鹿なこと、俺達はしてねぇってな」
「日頃から馬鹿ことをしているクセに吠えるね」
「ああ、吠えてやるよ。だって俺達はしてねぇんだからな。賭けてもいい、俺達はしてねぇ」
ヨウは先輩に断言した。不機嫌のせいか自然と声が低い。
見ていた俺の心境。マジ、うっわぁ、ヨウ、カッケー! ってカンジ。
なんかさなんかさ、イケメン不良がこんなカッケー台詞言うとマジでカッケーんだけど! 腹立つくらいカッケーんだけど!
同じ台詞を俺が言っても、ここまでカッコイイとは思わないだろうな。
いいよなぁ、俺もイケメンに生まれてきたかったな。女の子にもモッテモテなんだろうなぁ。ナウい格好だって似合うんだろうな。
そんなこと思っている場合じゃないよ。
須垣先輩は一つ頷いてヨウに極上の笑みを向ける。
エンジェルスマイルっていうより、キラースマイル。
不良とは別の恐さを持っているような……だって先輩のスマイルを見ただけで鳥肌が立ったもん! 俺は思わず二の腕を擦った。
「なるほど。そこまで言うなら君達を信じてあげてもいい。ただし、それなりの態度を見せてもらわなくちゃね」
「態度、だと?」
地を這うような声でヨウが問い返す。先輩の笑顔に磨きがかかった。
「君達がこんな馬鹿なことをしていないというのなら、この事件の真犯人が捕まるまで、君達全員、一時限目から始まる授業すべてに出席してみせて欲しい。
つまりオサボリ禁止ってことだね。
とはいえ、それでもこのまま真犯人が捕まらない可能性があるし、君達も辛いだろうから一週間という条件を付けよう。
一週間、君達全員、一時限目から始まる授業すべてに出席してみせてほしい。
もともと君達の素行がヨロシクナイから疑われるんだ。
今回の事件も毎度まいど君達が授業をサボらなければ、容疑者として名が挙がることもなかった。
それは君達に非がある。
僕等の言い分を正論化するわけじゃないけれど被害側から見た時、サボってばかりの君達が犯人じゃないかって疑っても不思議じゃないだろ。
僕等の立場になって考えてごらん。きっと君達が僕等の立ち位置にいたら、僕等をなんの躊躇いもなく疑うだろう? それだけ君達は相応のことをしているんだ。
でも君達はしていないと言う。
なら、それなりの態度で行動で僕等を信じさせてみせてほしい。君達がそれなりの態度を見せてくれたら、僕等も『ああ、落ちこぼれでも彼等は犯人じゃないかもしれない』って思うだろうから。
人を信じさせるというのは、そういうことさ。
何事も態度で示してもらわないと、ただだだ馬鹿みたいに吠えられてもこっちとしては信じるどころか疑う一方だからね」
逃げ場を塞ぐように須垣先輩がニッコリ笑ってきた。
須垣先輩の爽やかスマイルがデビルスマイルに見えて仕方がないのは俺だけだろうか。
取り巻くオーラが黒いっつーかさ。人の神経を逆撫ですることがお上手というかさ。
そりゃ、一週間真面目に授業に出るだけなら俺的に余裕だと思う。“俺的”にはさ。
だけどヨウを始め、ワタルさん、弥生にハジメ(とオマケでタコ沢)はよく授業をサボるから、そんな条件を突きつけらたら……なぁ。