青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
背後から怒号が聞こえる。
後ろを一瞥すれば見る見る姿形が小さくなっていく不良さま一匹。
いける、確実にあいつを撒ける。
俺は渾身の力を込めてペダルを漕ぎ続けた。
路地裏は日当たりが悪いせいか、視界が悪く、しかも道々に障害物が散乱している。
でもそれを気にしていたら絶対に撒けない。
ハンドルを使って器用にかわし、俺は細い路地裏を颯爽と駆け抜けた。
そのまま大通りに飛び出すと、俺はチャリを漕ぎ続けて近くの川原まで逃走。
さすがについて来れなかったようで、不良の姿形気配はない。
十二分に安全を確認し、俺はブレーキをかけた。
「ふうっ。ここまで来れば、もう大丈夫だと……はぁ、疲れた」
グッタリとハンドルに凭れ掛かる。
同乗している荒川は、「やばかった。マジオモレェよ、チャリの後ろ」大はしゃぎしている様子。
乗っているだけは良いよなぁ。俺は必死でペダル漕いでいたんだけど。
それにしても死ぬかと思った。
まさか不良に追い駆けられる日が平和主義者の俺に訪れるなんて、アンビリバボー。
チャリから降りた荒川は、まーだ絶賛してくれているのか、
「テメェ。チャリの腕スゲェじゃんか!」
あんな路地裏をスイスイ進めるなんて凄いと褒めてくれる。
「伊達にチャリ爆走男じゃねえなテメェ! チャリの後ろ、超楽しかったぜ」
「ぼかぁ、チョー疲れましたヨ。もう駄目っす。終わりましたっす。シンドイっす。青春の全部を今の騒動に費やした気分だ!」
おどけに、「じゃあもう枯れるしかねえじゃん」荒川は笑声を上げ、「枯れるはひでぇよ」俺も笑声を上げた。
なんでこんなに親しくなったかな俺達。
馬の骨が合ったってヤツ? 不良と仲良くするなんて、変な感じ。俺は不思議な気持ちを抱いた。
きっと、あれだよな。
今まで地味な奴等とバッカ接してきたから、日向人間と仲良くするのが俺には眩し過ぎるんだな。
ま、もうこうやって接する機会はないと思うけど。あって欲しくないけど!