青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
いっやぁー、ここで俺に振られても困るんだけどなぁ。
苦笑いを返す他なかった。
「なんかケイもひどーい」
脹れていた弥生はコロッと表情を変えて笑いを零すと、売店に言って来ると俺達に告げて教室を飛び出した。
だけどすぐに教室に戻って来た。
どうしたのかと思えば、弥生は財布を忘れて行ったみたいだ。
ヤラかしたと俺達にペロッと舌を出して、自分の通学鞄から財布を取り出すと教室を出て行った。
その際、俺達にヒトコト。
「先に行ってていいから。何かあったらメールしてね」
残された俺とハジメは視線を合わせた。
さあて、と、弥生がああ言ってきたからには体育館裏にボチボチ移動しないとな。
今日も天気がいいから、あそこで弁当を食べたら美味いんだろうな。
弁当と水筒を持って俺はハジメと一緒に教室を出た。
最初の頃は弁当と水筒を持ってウロウロすることが恥ずかしかったんだけど、慣れたらそうでもなくなった。慣れって恐いよなぁ。
「ケイはどう思う? 今回の事件のこと。率直な意見が聞きたいな」
ハジメが真面目な話を吹っ掛けてきた。俺は戸惑って間を置いてしまう。
率直と言われたからには、正直に答えるのが一番だよな。
「まあ……疑われても仕方がないとは思う。俺達、よくサボってるからさ。生徒会側の気持ち、分からないでもないけど」
こんなこと言ったら軽蔑されると思ったけど、意外にもハジメは俺と同じ意見だって告げてきた。
「僕もケイと同意見なんだ。須垣の疑う気持ちも分かる。
こんなことヨウ達に言ったら怒られそうだけど、僕達のような生徒ってのは教師にとっても生徒会にとっても目の上のたんこぶなんだよ。
髪は染める、ピアスの穴はあける、服装違反上等な上に授業はよくサボる。教師にとって頭痛のしてくるような生徒達だろうね。学校の秩序を守っていると言ったら大袈裟かもしれないけど、秩序を守っている生徒会にだって僕等のような生徒は煙たがりたいものさ。
でも注意したところで僕等の態度が改まるわけじゃない。ますます悩みの種になってくる、けど、どうしようもない。
そんな時に今回の事件が起きた。そりゃ疑いたくもなるだろうね」
ハジメは吐息をついて、俺の方を見た。
「学校側にとって僕等は落ちこぼれ。問題が起きたら真っ先に疑われても仕方ない。こちらの言い分を聞いてもらっても、日頃の行いを指摘されて信じてもらえない。容疑が晴れても疑いの眼は向けられままってこともザラ。
学校にはそういう教師が多いから、ヨウは極端に教師を嫌っている。決め付けられることが嫌いなんだ、ヨウって」
そういえばヨウが担任と接していた時の、あの態度。
ただ横着ぶっているってわけじゃなかったような……俺も教師が好きってわけじゃないけど、ヨウのように毛嫌いするほどではないな。
須垣先輩の時だって、俺達を犯人だって決め付けたわけじゃないけど、疑いを掛けられた時、かなりキレていたもんな。恐かったなぁ、泣きそうになったなぁ、逃げたくなったなぁ、あの時のヨウ……マジで恐かったぁ。
「須垣先輩に落ちこぼれって言われた時、ヨウ、マジギレしていたよな」
「ヨウは学校では落ちこぼれかもしれないけど、不良としてはピカイチな奴だよなぁ。校則違反上等で、でも仲間大切にして。僕とは大違いだ」
……ハジメ、どうしたんだよ急に。俺はハジメを食い入るように見つめた。