青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



動きが止まったところで、赤茶不良は俺の足元を崩してくる。


俺は無様にも尻餅をついてしまった。

横腹や尻の痛さに呻いてたら、赤茶不良は俺の腹を思い切り踏んできやがった!



おまっ、シャツ汚したら母さんが煩いんだぜ!


しかもいてぇ、おもてぇ、道具使うの卑怯だろっ!


顔を上げれば、愉快に笑う先輩のお姿。

グリグリ足の裏で腹を踏みながら、俺を見下している。


「荒川の舎弟のくせに弱ぇな」


あ、今、カッチーンってきたよ。

いっちばん言われたくない言葉を言われたよ。


分かってんだよ、俺が弱いことくらい。

喧嘩慣れしてねぇんだし、望んで舎弟になったわけじゃないんだ。

喧嘩の強弱でヨウが舎弟を決めたとしたら、そりゃヨウの舎弟を選ぶセンスが悪いと思うぜ。


けどさ、あいつ、喧嘩の強弱じゃなくて“俺”を選んだんだよ。


田山圭太っつー日陰男を舎弟にするって決めちまいやがったんだよ。

俺が面白いのどうのこうのって訳分からない理由で舎弟を勝手に決めちまいやがったんだ。


日賀野の一件も、あれだけ俺が足手まといだって分かったのにも関わらず、俺に改めて舎弟になれって誘ったんだ。

俺はそれに成り行きでも乗っちまったんだ。


だから弱くたって精一杯、俺のできる範囲で舎弟やるっきゃねぇんだって。


しかも今回、俺が初めて望んで喧嘩に参戦したんだ。

負けたら、流れ的にヨウの顔に泥塗っちまう上に、ワタルさんに後でなんて言われるか。何されるか。

それに、格好付けてここまで来たんだ。

ヤラれっぱなしはダッセェんだって、なあ、そうだろ?

俺は胸ポケットに手を伸ばした。見下す不良に含み笑い。


「弱くてわるぅございましたね。俺、地味っ子ちゃんですから? 喧嘩慣れてないんですっ、よ!」

「テッ……!」


ポケットから生徒手帳を取り出した俺は、力任せに赤茶不良の顔面に投げつけた。

力の抜ける足を掴んで持ち上げると、そのまま足払い。

相手が尻餅ついた隙に、持っていたプラスチックパイプを奪い取って右横腹を蹴りたくってやった! お返しだチクショウ!

プラスチックパイプを持ったまま立ち上がると、相手も態勢を立て直した。


盛大な舌打ちをして素早く、壁に立て掛けてある鉄パイプを手に取った。


ゲッ、ちょ、マジで!


あんたそれ、頭にぶつかりでもしたらかち割れちまうぞ!

鉄パイプって状況によっちゃあ法律で凶器になること知っているか? 下手すりゃ警察沙汰だぜ、先輩?


……相手はご存じないらしい。マジっぽいようだ。目が据わっちゃっている。




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