青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



「カミングアウトするとさぁ、最初はケイちゃーんもヤマトちゃーん達の回し者だって思っていたんだよねぇ」



スケッチブックを落としそうになった。

今、ワタルさん、何て言った? 思わずワタルさんを凝視。

「だってぇ、種類違うじゃナーイ?」

ワタルさんは話を続ける。


「ヨウちゃーんが気に入って舎弟にしたって分かってたんだけどねぇ、どっかで疑っていた。こーんな地味ちゃんでも、何か裏があるんじゃないかって。
不良と、そう好んで親しくする地味ちゃんっていないし。地味ちゃんだからこそ、裏がある。だからヤマトちゃーん達の回し者だと思っていた。もしそうだとしたら、」


フルボッコにするつもりだったんだよねぇ。

ニッタァニタァ笑うワタルさんだけど、絶対にマジだ。

俺、日々ワタルさんにフルボッコされそうになっていたんだ。


今まで無事だった俺になんか泣けてきたよ。

何も知らない方がシアワセってこともあるんだなぁ。


身震いをしていたら、ワタルさんが肩に腕を置いてきた。勿論、右肩に。左肩に腕を置かれたら、俺は甲高い絶叫を上げている。


「でもま、ザーンネンなことにケイちゃーんは白だった。フルボッコしそこねちゃった」


白だった。つまり俺、疑いが晴れたのか。

そうだよな。俺、日賀野にフルボッコされたし、舎弟に誘われたし、負けちゃったもんな。あんなことがあれば誰だって白だって分かるよな。

グールグルと考えてたら、ワタルさんに耳引っ張られた。い、痛い!



「また一緒に喧嘩を売りに行こうねぇ」



たったそれだけの言葉だけど、なんでか俺にはすっごく嬉しかった。認められたというカンジがしたから。


「はい」


俺は綻んでしまう。

こうやって人に認められると良いよな。

これからも頑張っていこう。

これからどんどん頑張って好(よ)き舎弟になって喧嘩にもバンバンー……待て待てまて!


俺、どんどん不良の波に呑まれていっているぞ! このままじゃキンパまっしぐらだっ! イェーイ、キンパ田山、絶対似合わねぇ。


けど俺、現に喧嘩に参戦しちまったし。

すっぱり諦めるか、舎弟白紙……いや、それは捨て難い。捨てがたいぞ。


それに今回は喧嘩参戦したけど、次回しろって言われたら躊躇うぞ。うん。



「さてと。ケイちゃーん。あのさ、ひとつ相談があるんだけどぉ」



悶絶している俺に、自分の携帯画面を見せてくるワタルさん。

画面には多数の新着メールと着信。


きっと俺の携帯も同じような状態になってるんだろうなぁ。俺とワタルさんは歩みを止めた。

困ったように笑うワタルさんに対し、俺は引き攣り笑い。


そうだった。

この後に待ち構えている恐怖をすっかり忘れていた。


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