青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
俺がヨウの性格を知り始めたように、ヨウも俺の性格を知り始めている。
まったくもってそのとおりだよ。
本当は止めたい。やりたくもない。喧嘩なんて。
しかも相手は、俺をフルボッコにした日賀野大和含む不良グループ。
喧嘩なんて、絶対したくないさ! 舎弟だって、いまだに白紙にしたいと思っているさ! 平凡な生活が戻って来て欲しいって片隅で願っているさ!
でも約束しちまっただろ。
二人でイケるところまでイくって。
ヨウは俺にそう誘って、俺は誘いに乗った。
だったら付き合わなきゃイケないだろ。俺はどう嘆いてもお前の舎弟なんだから。
「俺はヨウみたいに喧嘩なんて強かないし、喧嘩しても押され押されのダメダメ。
今日の喧嘩もどうにか根性で勝ったけど、代償がこの怪我。今のヨウの舎弟はこんなに弱い。ヨウ、どうする? 今なら舎弟、モトに変えられるけど」
「今さらだな。ダッセェだろ」
「ヨウなら、そう言うと思った。だから止めない。とことんヨウの足になるよ、俺は。喧嘩も多少はするけど期待はするなよ?」
満足気にヨウは笑った。
「俺の足が怪我すんなって」
嫌味を飛ばしてきたけど、心配の代わりだってことくらい俺には分かった。
結局、半分以上はヨウにバレちまったけど魚住が関係していたことは最後の最後まで口にしなかった。“収穫の無い喧嘩”だったんだ。
魚住のことは報告しなくてもいいと思ったし、ワタルさんも望んでないと知っているからさ。
「にしてもアリエネェ。舎兄置いてサボりなんざ。俺はクソつまらねぇ授業受けてたっつーのに。ん?」
ネチネチ文句を言ってくるヨウの言葉が不意に途切れた。
メールなのか着信なのかは分からないけど、ヨウの携帯が振動したからだ(助かった! さっきから文句バッカだったんだよな!)。
携帯を開いたヨウはしかめっ面を作った。着信みたいで、耳に携帯を当ててたけど仕草が嫌々。
「何だよ」
開口一番に文句を吐き捨てる。
何だか聞いちゃいけない気がしたから、俺は携帯を取り出してインターネットを開いた。
普段は見向きもしないニュース記事を適当に読み漁ってヨウの会話が終わるのを待つ。
「フッザケんな!」
突然の怒声にビビッて携帯を落としそうになった。
ヨウは舌打ちをして、荒々しく頭を掻き毟った。
「あーあーあー、そーかよ。知るか。俺の知ったこっちゃねぇよ。じゃあな」
壊れるんじゃないかってくらい勢いよく携帯を閉じたヨウは、「イライラする」重々しい息と一緒に愚痴を零した。
なんだか分からないけど、イラつくことがあったんだな。
こういうのって下手に聞いちゃダメだよな。
俺は携帯を閉じて、
「時間ヤバイか?」
さり気なく質問を投げ掛ける。
日も暮れちまいそうだ。病院に付き合わせたってのもあるし。