青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



一通り泊まりの話題が済むと、今度は日賀野達の話題になった。


間接的にだけど昼間日賀野達と関わった手前、あんまり奴等のことは耳に入れたくないんだけどそうも言ってられない。

日賀野達の問題はヨウ達にとっても俺にとっても深刻になりつつあるから……俺がどんどんややこしい問題に足を突っ込んでいるのかもしれないけれど。


昼間の喧嘩の一件、俺達の学校の生徒会長のこと、俺やハジメのフルボッコの一件、俺が関わった限りの話題を三人は広げ始めた。日賀野達の動きを把握するために。


ヨウは残り少ないポテトを一気に口に入れて眉根を寄せる。


「俺んところの生徒会長がヤマトと関わってる可能性が出てきた」


シズもぎゅっと眉根を潜めた。「有り得なくはない話だな」


「向こうには……アキラがいる。あいつは顔が広い。関係を持っていてもおかしくはない」

「あいつ等の動きがちっとも読めねぇ。けど、俺達にちょっかいを出してきてることには違いねぇ」

「チッ、うぜぇ」

やり口が気に食わないと響子さんは銜えていたストローを齧った。


「ヨウ……黙ったままなんて……言わないよな?」


シズはヨウの意思を尋ねていた。

シズ自身も我慢がならないんだろう。ちょっかい出されっ放しの状況が。

当たり前だとヨウは苛立たしげに食い終わったハンバーガーの包装紙を丸め潰した。


「やられっ放しなんて冗談じゃねえ、あいつ等がその気ならこっちもやってやろうじゃねえか」


フンと鼻を鳴らし、異議はないなと俺達に意見を聞いてきた。


「誰も異議なんざねぇよ」


響子さんは口角をつり上げた。

こういう展開を待っていたとばかりに目尻を下げて笑う。


「いずれかは……ケリをつけるつもりだった」


スーッと目を細めるシズの瞳に静かな闘志が宿っていた。

どれだけ向こうを敵視しているのか分かる目だった。


嗚呼、みんなやる気なんだな。

俺的には乗り気じゃねえけど、舎兄がやる気なら仕方ないよな。


舎弟も全力で手を出そう。


それが俺とヨウの約束だ。


俺はシズや響子さんと同じ返事をした。

空になったポテトの容器に丸め潰した包装紙を突っ込みながらヨウは話を続ける。


「ただ真正面から突っ込んでも俺達が馬鹿を見るかもしんねぇ。
負けは勿論、勝ったとしてもこっちが痛手を負う可能性は大だ。今まで偵察程度だったが、これからは本格的に向こうの様子を探ってみようと思う。これは後日、此処にいないメンバーにも伝えるつもりだ」


「ヨウ、熱でもあるか? お前らしくない……知的な考えだな」

「真正面から突っ込むしか脳がねぇのに、どうした?」


レモンを丸呑みしたような二人の顔に、ヨウは決まり悪そうに舌打ちをかました。


「……うるせぇなシズ、響子。わーってるよ、俺らしくねぇ考えっつーのは。これはケイの意見だ」


「……だろうな」

「おかしいと思ったぜ」


シズと響子さんはうんうんと頷く。

普段、ヨウがどれだけ本能で動いているか分かる態度だな。


普通に考えてまず準備なしに真正面から突っ込むっておかしすぎだろ!

RPGでいえば、武器も防具もなしに敵へと突っ込むようなもんだろ。直球型なんだよな、ヨウって。



相手グループの頭は変化球型だから相性的には最悪だと思う。


少しはしたたかにいかないとな。

ヨウの直球型な性格に知が入れば、きっと相手を上回ると思うんだけど。そりゃ難しいよな、ヨウの性格からして。

知があるなら、俺の舎弟の件だってややこしくならなかったしな!


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