青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



結局、日賀野達の話も打ち切りになり、俺達は世間話に花を咲かせることにした。

息の詰まりそうな話よりも、他愛もない話をしていた方が俺的にはこっちの方が楽しかった。ヨウ達もそうみたいだ。


「あの時、先公に捕まってさ……」


なんて自分の失敗談を話しては笑声を漏らしている。

俺も笑声を漏らした。

やっぱこういう話は肩の力が抜けて良いよな。


途中トイレに行きたくなった俺は一旦席を外させてもらった。


「自分も行く……」


シズも腰を上げてくる。

ハンバーガー店は通路と合体しているから敷地が狭く、店内には手洗いがない。面倒だけど敷地の外に出なきゃいけないんだ。

俺とシズは全開されている扉から出ると階段を下りて、一階の手洗いに足を踏み入れた。

用を足した俺達は仲良く肩を並べて手を洗う。


「眠い……」


欠伸を噛み締めるシズに思わず笑っちまった。いつも眠そうだよな、シズって。

「シズって大食いなんだな。毎日あの量なのか?」

「ふぁ~……毎日三食、丼でメシ食ってる。間食も欠かしたことがない」

間食は欠かす欠かさないのもんじゃないだろう。絶対。

キュッと蛇口を捻りながら、俺はシズの胃袋のでかさに感服した。

凄いよな、あんなに食べて太らないんだから。タオルハンカチで手を拭いていると、


「そうだ」


シズはまた一つ欠伸を噛み締めて俺を見てくる。


「ケイ……さっきハンバーガーと一緒にアップルパイを頼んでいたな。甘いものは好きか?」

「ンー、好きかって言われたら好きな類に入ると思うけど」


「丁度良かった……自分ン家の近所にケーキバイキングをしている店があるんだが」


嫌な予感がするぞ。しちまうぞ。

俺の気のせいであってくれ!

一緒にケーキバイキングへ行こうなんてお誘い、俺の予想外れであってくれ。


「一度行ってみたいと思うんだが……ひとりはちょっと恥ずかしい。ケイが一緒に行けるメンバーで……良かった」


おぉおおおお俺はもう“行くメンバー”に入っちゃっているんですか!

< 185 / 845 >

この作品をシェア

pagetop