青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
結局、日賀野達の話も打ち切りになり、俺達は世間話に花を咲かせることにした。
息の詰まりそうな話よりも、他愛もない話をしていた方が俺的にはこっちの方が楽しかった。ヨウ達もそうみたいだ。
「あの時、先公に捕まってさ……」
なんて自分の失敗談を話しては笑声を漏らしている。
俺も笑声を漏らした。
やっぱこういう話は肩の力が抜けて良いよな。
途中トイレに行きたくなった俺は一旦席を外させてもらった。
「自分も行く……」
シズも腰を上げてくる。
ハンバーガー店は通路と合体しているから敷地が狭く、店内には手洗いがない。面倒だけど敷地の外に出なきゃいけないんだ。
俺とシズは全開されている扉から出ると階段を下りて、一階の手洗いに足を踏み入れた。
用を足した俺達は仲良く肩を並べて手を洗う。
「眠い……」
欠伸を噛み締めるシズに思わず笑っちまった。いつも眠そうだよな、シズって。
「シズって大食いなんだな。毎日あの量なのか?」
「ふぁ~……毎日三食、丼でメシ食ってる。間食も欠かしたことがない」
間食は欠かす欠かさないのもんじゃないだろう。絶対。
キュッと蛇口を捻りながら、俺はシズの胃袋のでかさに感服した。
凄いよな、あんなに食べて太らないんだから。タオルハンカチで手を拭いていると、
「そうだ」
シズはまた一つ欠伸を噛み締めて俺を見てくる。
「ケイ……さっきハンバーガーと一緒にアップルパイを頼んでいたな。甘いものは好きか?」
「ンー、好きかって言われたら好きな類に入ると思うけど」
「丁度良かった……自分ン家の近所にケーキバイキングをしている店があるんだが」
嫌な予感がするぞ。しちまうぞ。
俺の気のせいであってくれ!
一緒にケーキバイキングへ行こうなんてお誘い、俺の予想外れであってくれ。
「一度行ってみたいと思うんだが……ひとりはちょっと恥ずかしい。ケイが一緒に行けるメンバーで……良かった」
おぉおおおお俺はもう“行くメンバー”に入っちゃっているんですか!