青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―


お誘いすっ飛ばしてメンバーに入れるなんて、そんな予想、誰がしたよ。

そんなに目を輝かせないでくれ。シズ。俺、断れないじゃないか。


その前にアンタも不良だもんな、髪が水色だもんな。断る勇気なんて俺にはないよ。全然ないよ。


俺は空気が読める子だからな、シズに言うんだ。


「シズや俺のほかにメンバーはいないのか?」


俺って偉いな、嫌な素振りひとつも見せないんだからさ!


するとシズは洗面台に水気を飛ばしながら、ぶっすーと拗ねた顔を作った。


珍しいな。

いつも妖精さんと戯れているような顔をするのに。


「女子は誘えば……快く一緒に来てくれる。男はつれない奴ばっかりだ。取り敢えず……この前、デザートバイキングに行った時はモトを引き摺っていった」


前にも行ったんかい!

しかもモトを引き摺ってって(かなり嫌がったんだろうな。モト)、うわぁ、同情はするよ。モト。俺も近々同じ運命を辿りそうだけどな。


フッ、しかもシズの中で勝手に『こいつなら一緒にデザートバイキングに来てくれるだろうメンバー』に登録されちまった。


ある意味、モト以上に可哀想だ……俺。恥ずかしいんだろうな、デザートバイキングって女性のイメージがあるから。まだ焼肉とかだったらなぁー。


ええい、くっそう! もうどうにでもなれ! 腹括ってシズと行ってやらぁ!


「楽しみだなー」


ヤケクソに笑いながら、シズと一緒にトイレから出る。

階段を上りながらシズは、頼みもしていないのにモトと行った時のデザートバイキングについて語り始めた。食べ物の話になると饒舌になるんだな、シズって。


「ワッフルが……まず最高だった。次にチョコレートスフレが格別に美味かった。季節限定のアイスが感動的美味。タルト……絶妙極まりない」 


デザートの感想を教えてくれるんだけど、何がどう美味しかったのかが俺にはイマイチ伝わってこない。

伝わってくるのは食べたデザートは全部美味しかったってことだ。

へえ、とか。それ食ってみたい、とか。シズの話に一つひとつ相槌を打ちながら話を聞いていると、



「シズ、相変わらず食い意地が張ってんのう」


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