青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―


「それは無理じゃけん。無理じゃんけん。なんつって」

「お前から片付けられたいか」


「のんのんノンセンキューじゃい」


べっと魚住はシズに向かって舌を出した。わぁーお、舌先にもピアスが。痛くないのかな、あれ。


やっぱさ、ワタルさんの親友なだけあって結構うぜぇ!

話には聞いてたけどやっぱうぜぇ!


ヨウ達も言っていたけどうっぜぇ!


っつーか此処でやる気か、シズ。それは駄目だ。此処は人が多過ぎる。駅中で問題を起こしたら色々と面倒事になるぞ。


いや、きっとシズは分かっていてやるつもりだ。

ギラついている目がそう俺に教えてくれる。


ああくそう、俺の足手纏い!

俺のせいで話がややこしくなってるんだぞ!


また日賀野のいいようにされちまう!


利二の時もそうだった。

いいように弄ばれて、俺は何も出来なかった。歯痒い、悔しくて仕方が無い。

だけど肩を人質にされると、さすがにこっちも身動きが取れない。

全体重を掛けている腕が、容赦なく黒痣になっている箇所を押し潰してくる。しかも肘で。


頑張って足を踏ん張ってはいるけど、めちゃくちゃ痛いっ。


どうにか日賀野から離れなきゃいけないのは分かっているのに。

こんなところで騒動を起こしたら最悪警察沙汰に……先に手を出した方が負けだ。つまり先に手を出そうとしている俺達の負けだ。




「シズ。手ぇ出すんじゃねえ、場所を考えろ」 




この声は。

顔を上げれば、そこには眉間に皺を寄せた舎兄の姿。それに響子さんもいる。

「遅いと思ったら」

日賀野達の姿にヨウは忌々しく舌打ちを鳴らし、後は任せろとばかりにシズの肩に手を置いて魚住の脇を擦り抜ける。

「ヤマト、俺の舎弟に何してやがる。ケイから離れろ」

「これはこれは、プレインボーイの舎兄様。随分、兄貴面をかましてくれる。腹立たしいよな? プレインボーイ」


「イデデデデデッ、体重ッ! 体重掛けないでくれー!」


黒痣ができている箇所を肘でグリグリ押され、俺は大絶叫を上げた。

そこは全治二、三週間って診断された場所なんだぞッ!

グリグリ押し潰されたら、どんだけ痛いと思って。


くっそう、そんなに俺を苛めて楽しいか!


「ケイに何してやがる」


早足で俺達に歩みって来たヨウは、肩に乗っている日賀野の腕を払い落とした。


おかげで肩が随分楽になる。


でも体重を掛けられていたせいでズキズキと肩が疼く。痛みを散らすように肩を擦っても、疼きは止まることは知らない。

俺の様子にヨウは片眉をつり上げて、日賀野にガンを飛ばした。


「テメェ。ケイが負傷していることを知ってんな?」

「ご挨拶だな、荒川。相変わらず虫唾の走る面だ」


「質問の答えになってねぇ」

地を這うようなヨウの声に、

「答えてやるギリはねぇ」

日賀野が薄ら笑いを浮かべる。


「その節はよくもハジメとケイを甚振ってくれたな。相変わらず、姑息な手でちょっかい出しやがって。正面から来る勇気もねぇのか、ハイエナが」

「お前と違ってここの使い方が違うんだよ。そっちこそ随分俺達のテリトリーで暴れてくれたようだな。お前等の暴れっぷりには仲間達も迷惑している」

「ハッ、お前等のテリトリー? どっからどこまでが?」


「馬鹿に説明しても同じだ」

「うぜぇ死ね」

「黙れクズ」


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