青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



「風呂は十時くらいからぼちぼち入る。俺達、部屋に行くから。あ、金髪の方が荒川庸一。水色髪の方が相牟田静馬」

「庸一くんに静馬くんね。二人とも、着替えとかはある? 下着の替えがないなら、新しいの出すわ。お風呂に入る時に出してあげるから。丁度買い置きがあるの」

「あ……でもワリィしなぁ」

「一日くらい……我慢は……寝巻きは……学校のジャージがありますし」


「いいのよ。我が家に初めて泊まりに来て、何かと戸惑うこともあるだろうし。サービスしないとね。二回目以降から持参してもらえればいいから。
それにしても、二人ともカッコいいわね。息子ながら圭太が霞んで見える」


そりゃな、不良の身形はカッコイイだろうさ。

ヨウなんてイケメンに属するんだ。地味野郎の俺なんて霞んで見えるだろうさ! でもそんな地味野郎を産んだのは母さんだぞ!


心中で突っ込んでいると、浩介がゲーム画面から顔を上げてリモコンを手に取った。ピッピッピッとチャンネルを変え始める。


「あー!」


次の瞬間、母さんが声音を張った。


「浩介! 今から衛星放送で韓ドラ観るんだから、テレビのチャンネル替えないで!」

「今からお笑いがあるからやっだぁ」

「ゲームとテレビを一緒に取るなんてルール違反よ! どっちか一つになさい!」


「今はゲームしてないもーん」


田山家のルールはテレビを見るならテレビだけ、ゲームをするならゲームだけ、パソコンをするならパソコンだけと、一つのものに絞らなければいけない決まりがあるんだ。

テレビを観ながらパソコンをする、ゲームをしながらテレビを観る、そういった行為は言語道断。やるなら一つに絞らないとルール違反なんだ。


ま、単純に言えば、我が家で人気があるテレビやパソコンはみんなで仲良く円満使おうってことでこんなルールがあるんだ。


けどこのルールがあるせいで何かと喧嘩が勃発。今も母さんと浩介がテレビを取り合っている。


「お母さん、ケチくさい! 子供に譲ってよ!」

「馬鹿、テレビに大人も子供も親子もないのよ! 圭太の部屋にもテレビあるでしょ! そっちで観なさい!」 


「兄ちゃんとこのテレビちっさいもん! こっちがいいっ! 母さんの贅肉マン! 三段腹!」

「ンマッ! ゲームばっかりしてるもやしっ子には言われたくない台詞! 根暗になるわよ!」


「僕は地味ですぅー。根暗と対して変わりませんー」

「母さんだってもう歳だから、贅肉が付き始めても気にしてませんー。さっさとリモコン渡しなさい!」

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