青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
すっかりヨウをお気に召したようで浩介はシズが戻って来ると人懐っこく構ってかまってと態度で示す。
これまたシズも人が好いから鬱陶しい素振りを見せることなく相手をしてくれる。
間食用お菓子を浩介に見せて、「食べるか?」なんて気遣ってくれる始末。
我が弟のことながら非常に申し訳ない。申し訳なさ過ぎる。
シズが浩介を相手をしてくれている間、ヨウは風呂へ、俺は浩介のためにボスステージをしてやる。
ヨウが風呂から戻って来た頃には浩介の待ち望んでいたボスまで辿り着けたから、俺はゲーム機を浩介に渡してやった。
目を輝かせて浩介はそれを受け取ると、後は部屋でやると自分から言ってきてくれた。
浩介が部屋に戻ってくれる。
あー良かった……安堵する俺を余所に浩介はヨウとシズに「明日も泊まるの?」と質問。
どうやら浩介の中で二人は、『自分に優しくしてくれるお洒落かっこいい不良お兄ちゃん』として登録されたらしい。泊まって泊まってと目が輝いている。
ちなみにいつも泊まりに来る利二は浩介の中で『自分に優しくしてくれる物知りお兄ちゃん』として登録されている。
利二って結構物知りで、浩介に色んなことを教えてくれては相手をしてくれている。
「明日は分かんねぇな」
「ごめんな……」
二人が分からないと言葉を返せば、残念そうに肩を落とした。
「分かんないんだ。そっかー……でも、また泊まりに来てね!」
「おう、来てやる来てやる。また話そうな、浩介」
グシャグシャっとヨウが浩介の頭を撫でる。調子に乗った浩介は満面の笑顔で更に言葉を重ねた。
「庸一兄ちゃんも静馬兄ちゃんも、今度は一緒に夕飯食べようね!」
「ああ……そうだな……ご馳走してもらう」
「絶対だよ? じゃあ、兄ちゃん達、おやすみ。兄ちゃん、ゲームしてくれてありがとう!」
構ってもらった上にボスまで辿り着けた浩介は、ご機嫌ルンルンで部屋から出て行く。
二人ともほんと面倒見がいいというか、お人好しというか、申し訳ないっていうか。浩介のヤツ、図々しいというかさ。
「ごめんな。浩介の相手してもらって。疲れただろ? あいつ、俺の友達だと分かると誰ふり構わず、懐いてくるから」
「可愛いじゃん、浩介。ああいう弟だったら欲しいぜ。また泊まりに来てくれとか、嬉しいこと言うしさ」
「ほんと……にな」
「二人が疲れてなきゃいいけどさ。あ、俺、風呂入ってくるから。適当に寛いでてな」
言葉を残して俺は寝室を出て風呂に向かった。
風呂に入る際、俺はすっかり忘れていた左肩を負傷を思い出した。
家族にばれないようにするために普段着ている寝巻きから、一昔前に使っていた寝巻き用のジャージに交換する。
これなら肩の黒痣も隠せるし、滅多な事じゃばれないだろう。
湯船に浸かりながら、俺は後でヨウに診察料払わないとな……っと、ぼんやりと思考をめぐらす。本当に今日は濃い一日だった。