青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



ワタルさんと一緒に昼間喧嘩しに行って、生徒会長に嫌味言われまくって、日賀野達と再会して、帆奈美さんにヨウの舎弟は後悔するって忠告されて。


俺は帆奈美さんの言葉を真に受けるつもりは毛頭なかった。


後悔するもしないも、ヨウがどういう男かも、自分の目で見極めるつもりだったから。


舎弟になった時点で後悔はしているさ。

不良に関わった時点で後悔もしている。


でも、今日の泊まりに来たヨウとシズを見て、ちょっと関わって良かったかもって思えるようにもなった。結構楽しかったんだ。三人でワイワイしててさ。


どう不良に飾っても俺と同じ16なんだってとこも、家庭事情複雑ってことも知った。うん、ヨウ達って普通の俺とそんなに大差ないんだな。


「けど日賀野達との宣戦布告。あれ、どーなるんだろうな」


うう……考えただけで気が滅入るぞ。

日賀野達と全面的に対立することになったんだし、俺はきっぱりと日賀野に舎弟にはならないっと言った。


元々敵だったんだけど、今回のことで完全に敵になった。日賀野は舎兄のヨウを嫌悪している。


舎弟の俺だって同じことが言えるわけだ。

日賀野にとって俺って存在はからかいやすいみたいだから、悪い意味で気に入られてはいるんだけどさ。



大袈裟に溜息をついて俺は浴槽から出た。

考えても仕方が無いよな。うん、仕方が無い。


あーあ、明日も学校だな。行きたくないな。だるい。


水気を取って寝巻きに着替えた俺は台所に行って水分補給をする。台所には母さんがいた。


お茶を飲んでいる俺の頭を叩いて、「何してるの」前触れもなしに叱り付けてくる。


いきなり何だよ、もう。脹れる俺に母さんは呆れながら溜息。


「お風呂に入る前に寝床の準備をしてあげなきゃ駄目じゃない。二人がしてくれたのよ?」

「あ、やっべぇ……」


泊まりに来てる二人にさせちまった。大失態だ!

仕方が無いんだから、文句を垂れてる母さんは後で謝っておくよう言い、流し台に立つとちゃっちゃかと皿を洗い始めた。


「不良でも良い子ね、あの子達」


不意に母さんは声を窄めた。

不良に嫌悪感の色は見せなかった。どことなく安堵の顔を見せている。

母さんは分かっていたのかな、ヨウ達が不良でも良い奴等だってこと。


「利二くんみたいな子ばっかり付き合っているかと思ったら、圭太も色んな人と付き合うようになったのね。悪い子達じゃないってのは挨拶で分かったわ。
さっき浩介がいっぱい相手をしてもらったってはしゃいでたし」


けど次の瞬間、声がキュッと強張った。


「あの子達。話をしていると、何だか複雑な事情を抱えているみたいだけど」

「……母さん、二人から聞いたのか?」


「勘よ、勘。大丈夫、詮索はしないから。とにかく我が家では変に遠慮させないこと。寛いでもらうこと。
それから圭太のお友達なんだから、圭太がちゃんとお世話すること。気遣ってあげること。分かった?」


「はーい」


「あ、圭太。明日は母さん、朝から出掛けないといけないから。
明日も泊まるなら、母さん、夕方過ぎに帰って来るからって二人に伝えててもらえる? 何か食べたいものがあったらメールで教えて。買い物はしてくるから。それと朝食は圭太がしてあげて。棚にパンが入っているから」


顎で棚をしゃくる母さんに肯定の返事を返して、俺は二人の待つ自室へと向かう。


その際、母さんに紙パックのミックスジュースを手渡された。俺は紙パックを手土産に自室に入る。二人は敷布団の上で胡坐を掻いて携帯弄りながら駄弁っていた。


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