青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



でもさ、それがヨウの良いとこでもあるんだと思うよ。

気遣いが悪いとは言わない。


ただ極端に“過ぎる”んだよ。

ヨウは律儀で義理堅いから“過ぎる”面に気付かないかもしれないけど、俺からしてみればちょっと背負い過ぎている。


ヨウが何に対して不安になっているのか、上手く言えないけど、きっと背負い過ぎているから漠然とした不安がでてくるんだと思うんだ。


自己嫌悪もそう。

ヨウは“過ぎる”ところがある。


ある意味、ヨウのそういうところがちょっと心配だったりするかも。


笑声交じりにヨウに率直な意見を言えば、限りなく穏やかな舎兄の顔がそこにあった。

「かもしれねえなぁ」

曖昧に返事を返して、ヨウは大きく息を吐いた。

「俺にとって今つるんでいる奴等は、どいつもこいつも気の置けない奴等バッカ。失いたくねぇってのが本音だ。だから……無自覚にあれこれ考えちまうんだろうな」

「そりゃな。あのメンバーは気の良い奴等ばっかだから」

「なんで他人事のように言ってるんだよ」

ヨウは可笑しそうに笑った。


「テメェもだよ、ケイ」


その言葉と笑みに嘘偽りはなかった。

瞠目している俺から目を逸らしてヨウは天井に視線を向ける。顔は変わらず穏やかだった。

「今日は本当に嬉しかった」

改めて、ヨウは泊まりの礼を紡ぐんでくる。


「泊まりに来いって言ってくれたことも、こうやって世話になったことも、また泊まりに来いって言ってくれたことも。スゲェ嬉しかった。
まさか……ここまでテメェと親しくなるなんてな。ケイを舎弟にしたあの日は想像も予想もしなかった」


俺だって想像も予想もしなかった。

不良に対して泊まりに来いとか言ったり、家に連れて来て家族に紹介したり、ゲームしたり駄弁ったりするなんて。

舎弟になったあの日は絶対に“パシリ生活”が始まると思っていたのに。


「ケイみてぇな地味タイプと話したことはあれど、テメェほど気が合う地味不良はいねぇよ」


語頭に地味と付けているけど、敢えて俺を“不良”と呼ぶヨウ。

それは俺を仲間だと意識をしてくれている証拠なんだろう。

単なる舎弟じゃなくて仲間意識を持ってくれているから、気が合う地味不良と言ってくれる。



くそっ、小っ恥ずかしい奴だな。



本人を目の前に、そんな恥ずかしい台詞をポンポンポンポンぽんと。


俺が女ならイチコロだぞ、イケメン不良。

俺もイケメンに生まれて小っ恥ずかしい台詞を吐いてみたいもんだぜ。


照れ隠しのためにポリポリと頬を掻きながら、俺は言葉を返す。


「ヨウにならとことん……ついて行ってもいい気分。うん。あの時、日賀野大和の舎弟にならなくて良かった。これからもなる予定ないけど……ヨウ、サンキュな。あいつに脅された時、お前は俺を庇ってくれた。嬉しかったよ、マジで兄貴って感じだった」


「大したことなんざしてねぇよ」

「それが兄貴っぽいんだって。ヨウ、これから先どうなるかなんて分かんねぇけど、俺は最後までお前について行こうと思う。舎弟としても、友達としても。俺はヨウの舎弟だ」


口に出して決意が固まる。俺はヨウについて行くって。

帆奈美さんがヨウのことをどうこう言っていたし、彼女の言ったような一面がヨウにはあるかもしれない。


だけどさ、こうやって恥ずかしい台詞を俺に向かって言うヨウがいることもまた事実。


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