青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



二人してカッコイイと騒ぐもんだから、蚊帳の外にいるヨウが俺達に救いの眼差しを送ってきた。

俺とハジメはアイコンタクトを一つ取って愛想笑い。


見捨てるわけじゃないけど、あれをどう救えと? ヨウ信者を止められるのはヨウしかいねぇって。


無闇に俺等が入っていったら逆ギレされそうで恐いしな。ヨウ信者は恐い。めっちゃ恐いぞ。

現に俺はヨウ信者のモトに初対面で蹴られそうになったしな! 悪いけど俺じゃお前は救えないぞ、ヨウ!


ゲラゲラと笑うワタルさんは目尻に溜まった涙を拭きながら「男女にモテモテ」と茶化している。


響子さんはまた煩いのが増えたと呆れているし、弥生とココロはまだ自分達の会話に浸っているし、シズなんかまだうたた寝。タコ沢はまだ伸びている。

誰一人、ヨウを助けようとする奴はいない。

ヨウは自力で状況を打破しようと思ったんだろう。「おい」騒いでいる二人に嫌々声を掛けていた。

途端にピタって騒ぎ声は止まり、モトが改めて白髪頭不良を紹介する。


キヨタと呼ばれている不良の本名は村井 清隆(むらい きよたか)。

愛称キヨタだそうな。


前々からヨウのファンだったらしく、どうしても会いたいと言うから此処に連れて来たそうな。

日賀野の件があるから安易に人を連れて来るのもどうかって思うけど(ヨウはタコ沢を考え無しに連れて来たけどさ)、キヨタはモトの一番の友達みたいだし、あの様子じゃヨウ側の味方。


モトも此処に連れて来ても大丈夫って判断したんだろうな。


もしかしてモトはキヨタをチームに入れるつもりなのかな?


見ている限り、そういう素振りはないけど。


思った瞬間、モトがヨウにキヨタがチームに手を貸してくれることを告げていた。

きっとキヨタはチームの糧になる。そう付け足して。


「キヨタは凄いんですよ。少し前まで合気道習ってたんで喧嘩がめっちゃできるんです」

「合気道を? キヨタ、ちっせぇからそういう風には見えねぇけどな」


確かに。

目分だけどキヨタの背丈は165ちょいあるかないか程度。

俺でも170あるし、チームの男子は大体170越えてるからキヨタが小さく見える。


「小さいと馬鹿にもできないんですよ、ヨウさん。キヨタは合気道で全国に行ったことがあるんです。キヨタ、表彰されたんだよな?」


「ちょっとな……そんなに凄くは無いんだけど」

「凄いじゃんかよ! 準優勝しているんだから!」


モトの紹介にヨウは勿論、俺達もすげぇって感心しちまった。

だって合気道で全国だぜ? 準優勝で表彰されたりもしたんだぜ? そりゃ喧嘩も強いわなぁ。


「なら俺より強いな」


ヨウの褒め言葉に、「そんなことないっス!」滅相もないとキヨタはかぶりを振った。


「俺っちなんてヨウさんの足元にも及ばないっス! ヨウさんは強さは勿論、容姿も頭脳も性格もパーフェクトだってモトから聞いてますから!
実際、何度か喧嘩している姿を見かけているんっスけど、ヨウさんはやっぱ憧れの不良っス! 俺っちはそんなヨウさんに会えただけで幸せっス!」


「いや……そう言われるとなんっつーか。俺、考える方は苦手っつーか」


「またまた謙遜しちゃって! 軽やかに喧嘩するあの身のこなし。ヨウさんはスッゲェカッコイイっスよ。俺っちが女なら絶対抱かれたいって思うっス!
いやきっと男でも世の中には……俺っちもそっちだったらなぁ! 残念なことに、俺っち、女が好きなんっス! すみません、心身共に尊敬尽くせなくて。けどヨウさんのこと大尊敬してることは胸張れますから!」


それは尊敬と言わない。言わないからキヨタさん。間違った方向に話が流れているから。


親指立てて爽やかに笑顔を作るキヨタにヨウの表情は引き攣っている。


そりゃそうだろうな。

あんな風に言われちゃ誰だって引くって。


イケメンってのも大変だな。女は勿論、男にもモテるんだから。


初めて俺、凡人男子で良かったって思えたよ。

でもイケメンか平凡顔か、どっちになりたいか選べって言われたら、やっぱり前者を選ぶけどな!


 
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