青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―




「そういえば……」


キヨタが不意に肩を落とし、ヨウにポツリと質問を投げる。


「ヨウさん。舎弟を作ったそうっスね。俺っち、モトからその話を聞いて大ショックだったっス。ヨウさんが自分の後継者を作るなんて。しかも相手は不良じゃない……ただの地味っ子だなんて!」


ギクッ。 

心なしか冷汗が流れてきた。


ヨウ信者だから舎弟の話が出るんじゃないかな、とは片隅では思っていたけど、やっぱり来るとヤーな汗が噴き出てくる。


そりゃ俺、舎兄に比べたらイケメンじゃないし? 不良でもないし? イケている奴でもない上に地味だし? 喧嘩もできなけりゃ不良をド突く勇気もねぇ日陰男子。


うん、何となく俺がヨウの舎弟だって知った瞬間の顔が想像できる。


ヨウ達不良の間じゃ舎弟を作るイコール自分の後継者を作るというシステムになっているみたいで、ヨウの舎弟の俺は必然的にヨウの後継者ってことになっているけど、俺もヨウも後継者とかそんなの考えちゃないぜ! これっぽっちもな!


俺はヨウの思い付きで舎弟になっただけだもんな!


ヨウ信者にとっては妬まれる存在かもしんねぇけど、実は超可哀想なんだぜ。苦労人なんだぜ。

とばっちり受けているんだぜ、俺って!


「どの人っスか?」


キヨタがヨウの舎弟を探し始めた。

身の危険を感じた俺はイソイソと移動を開始(だって見つかったらめっちゃ面倒な事になりそうじゃんかよ!)。


でも開始する間もなく、モトがあれだと俺を指差してきた。


モトおま……先輩に向かってアレ呼ばわりとは。俺が一端の不良だったらシメているところだぞ! 勿論俺は不良じゃないから出来ないけどさ! 胸張って不良は恐いと言えるぞ。


「ええええっ、あれ?! もうまんま想像通りの地味ちゃんじゃないかよ、モトー!」


うっるせぇ! 悪かったな、想像通りの地味ちゃんで!

地味なりに精一杯毎日を生きているんだぞ、お前と同じ人間だぞ、コンチクショウ! お前も先輩の俺をアレ呼ばわりか、シメるぞ阿呆!


「あれがヨウさんの後継者っスか」


落胆を含むキヨタの声に、


「あれが一応後継者」


モトも便乗して落胆。


ヨウ信者に揃って落胆されちまったぜ、嬉しいな、チックショウ。すっげぇあいつ等の顔を殴ってやりたいぜ、ドチックショウ。


「うわぁあー……大ショックにショックが重なったっス。あのヨウさんがこんな……でももしかして、ああ見えて実はスゲェ喧嘩の腕の持ち主とか。だったらお手合わせ願いたいっス!」


ははっ、残念。俺は習字と塾しか習ったこと無いぜ!


だからお手合わせなんて無理だぜ! 勝負が数秒で決まっちまう!


あ、習字なら任せろ、お前に勝てる自信はある! 習字ならな!

ちなみに喧嘩の腕が無かったから日賀野にフルボッコされましたが、何か?


「実は至近距離で見ると隠れ美形だとか」


だったら今頃、俺はイケているナリで此処にいると思います! 彼女もいると思います! 彼女いない歴16年ですが、何か?


「実は実はー……分からないっス! なんであれがヨウさんの後継者なのか、俺っちには分からないっス! ヨウさんって地味が好みだったんすか?! だったら俺っちも明日から黒髪にしてダサ眼鏡掛けてみようかな。けどあいつみたいに地味オーラが出るかどうか分からないっス!」


「努力はしてみますけどできるかどうか」頭を抱えてしゃがみ込むキヨタ。



お前、地味が好みって発言、おっかしいだろ。ちょっと見方を変えればとんでもない誤解を招く発言だからな? な?

しかも地味オーラ……好きで地味していると思ったら大間違いだぞバッカ野郎!



ったくもう、ヨウ信者って揃いも揃って面倒な奴等バッカだな。

どーせこの後、ヨウ信者はこういうに違いない。お前なんてヨウの舎弟に不釣合いだ! ってな。

分かっているんだよ、そういうことを言われるのは。

ヨウ信者のモトで十二分にそれは分かったんだし。


きっとあいつも、 


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