青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「手前の立場も考えず、面白がってケイを舎弟にしちまったから、こんなことが起きるんだろ。ったく、手前のことだからって口は出さなかったけどよ。
うち等不良の間での“舎弟”がどういう意味を指すか、ヨウ、分かってンだろ? アンタの“舎弟”になった奴は、本人達がそう思って無くても舎弟の後継者って認識される。
ヨウ、現時点でのアンタの後継者は必然的にケイになっちまっているんだよ。
アンタ等がどう思っているか、うちには知るよしもねぇけど、少なくとも周囲の不良達はケイがヨウの後継人として見ている。
不良ならまだしも、まずケイのナリがこれだ。
なんで地味で喧嘩もできなさそうな奴が……度々噂も立ってンだよ。アンタがこういう事態を頭に入れてねぇからこうなる。
特にアンタはここらじゃ有名過ぎる不良なんだ。いずれこんなことが起きるんじゃないかって思ってたけど……やっぱきやがったな。
ヨウ、この際だから決めちまえ。アンタの相応しい舎弟ってヤツを。
チームのリーダーでもあるアンタのその目で見極めて、相応しい舎弟を決めるんだ。
しかも周りが納得するような意見を添えてな。
うち等は誰でもいいけど、納得しない奴等だって現にいるわけだ。
今までどおりケイを舎弟にするにしても、新たにモトもしくはキヨタを舎弟にするにしても、納得する答えがいる。
少なくとも当事者のケイとモトやキヨタが納得するような答えを出せ。
ケイなんざ、あんたの思い付きのとばっちりを受けてるようなもんだ。少しは使わない脳みそを動かせ。分かったな、ヨウ」
手厳しい響子さんの言葉にヨウはぐうの音も出ないみたいだった。
シズも同意見のようで、「チームの輪を乱すことは許さない」冷然と言い放つ。
普段の眠たそうな顔は何処へやら。副リーダーらしい威厳がシズを取り巻いていた。
「お前の決定でチームの輪が乱れる可能性がある……」
自分達の目的はあくまでヤマト達を潰すこと。チームの輪が乱れては元も子もない。
チームをより纏めるためにも、慎重に舎弟は決めて欲しい。
何よりお前はリーダー、これからは自覚を持って行動をしてもらわなければ此方が困る。
どちらにせよキヨタは、舎弟にならずともチームにはいて欲しい存在。合気道を使える点は大きな利益だからな。大きな戦闘力になる。
モトの一番のダチならば、ヤマトの回し者だと警戒する必要性も無い。
「入ってくれるな?」
シズの問い掛けに、「はいっス!」キヨタは勿論だって大きく頷いた。
リーダーと違って、副リーダーはこういったチームへの考え方は本当に上手いよな。尊敬するぜ、ほんと。
はぁあぁ、なんかドえらいことになってきたな。
どうしよう俺。んでもってどうするよヨウ。
俺等、色んな意味で舎兄弟ピンチだぞ。
まさかこんなところで終わりを迎えようとは思いもしなかったぞ。
俺はヨウに視線を向ける。
重々しく苦虫を噛み潰すような顔を作っているヨウに、俺は思わず苦笑い。後で舎兄弟二人っきりで話す必要がありそうだな。