青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「ケイちゃーん、リストラされたら僕ちゃーんの舎弟になればいいよーん! 僕ちゃーんの後継者にしてあげるってんばてんば」
会話に入って来たワタルさんは、ニヤニヤ笑いながら俺の右肩に手を置いてきた(左肩だったら叫んでいるところだった!)。
ワタルさんの舎弟……それだけはご遠慮させてもらいたい切に。
日賀野の舎弟の次に遠慮させてもらいたい。
だってワタルさん、ヨウよりも人使いが荒そう。んでもってワタルさんの二重人格部分には泣きそう。マジで。
まーだヨウの思い付き我が儘に付き合ってやった方がマシだって。
「キヨタちゃーんだっけ? ケイちゃーんは強豪だよよよん。なにせ、ヤマトちゃーんに舎弟勧誘されているんだからっきょ!
何より、ケイちゃーんはヨウちゃーんの足。腕っ節だけで舎弟の座を奪えるかなっぱ?」
「ヤマトって、敵側の頭っスよね? ええええっ、ケイさんっ、日賀野大和に狙われているんっすか! 実は陰の実力者なんっスか!」
「そーそー。仮にケイちゃんがヨウちゃーんの舎弟をリストラされても、新たに身内の誰かの舎弟としておかないと、ヤマトちゃーんに狙われるぽ」
「マジっスかァアアアア!」
キヨタは自分の絶叫した後、俄然燃えてきたと闘争心を滾らせる。
一方、俺はガックリと項垂れていた。
ワタルさん、そうやってまた余計な知識をキヨタに植え付ける。
「楽しんでいますね」
俺が喧嘩できない、チャリと習字だけの男だって知ってるくせに。ワタルさんに視線を投げやる。
「正直に言っただけぴょーん」
ウィンクしてくるワタルさんはへらへら笑い、溜息をついているヨウの肩を叩いた。
「ケイちゃーんリストラしたら、僕ちんにちょーだいね。移動が楽になるから!」
「チャリの後ろは俺の特等席だっつーの」
俺はあんた等の移動手段かよ!
ヨウの足だと自称しているだけに、そう思われてもしゃーないけど、だからって毎度まいど不良をチャリの後ろに乗せるのも苦労するんだぜ?
重いし、運転し難いし、速度も落ちるし。
なーんて意見できたらスッキリできるんだろうなぁ。
うふふっ、不良のチームに入っても田山圭太、内心では超不良が恐い今日この頃です。俺も不良になっちまおうかなぁ!
取り敢えず舐められない程度に髪染めてみっか! ……仮にそうしたら、無難に茶色になるとは思うけどさ。
うーん、それよりもこんな出だしでこのチーム、大丈夫かなぁ。
日賀野達、只でさえ曲者揃いなのに。
俺は小さく小さく溜息を零した。