青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「サンキュ」礼を言ってくるイケメンに、「どーいたしまして」俺は言葉を返す。意見が役立てられたなら本望だよ。
さあて、そろそろ学校に向かいますか。
チャリだったら十分も掛からないし。
俺はチャリに鍵をさしてヨウを呼ぶ。
当たり前のように後ろに乗ってくるヨウを一瞥。
舎兄弟じゃなくなったら、ヨウを乗せる機会も少なくなるんだろうな。
そう思うとちょーっと寂しくなる。
何だかんだで毎度のようにヨウをチャリの後ろに乗せていたしな。
今じゃ良い思い出だぜ。
ヨウをチャリに乗せていると厄介事なんかも出てきたりして俺、いっつもとばっちりを、
「見つけたぜっ、荒川庸一! よくも昨日は仲間を病院送りにしやがったな!」
俺は顔を引き攣らせた。
目前に十数人の不良さま達がガンを飛ばしてらっしゃる。
あっらぁ、そんなお顔ししちゃって、ブサイクなお顔が更にブサイクになっていますわよ。じゃなくて! ちょ、喧嘩売られているって俺等!
「ヨウさん。ヨウさん。昨日……何かしちゃいました?」
同乗者が軽く手を叩いた。
「気晴らしに喧嘩を少々。ほら、舎弟のことで頭がいっぱいだったから体を動かそうと思ってよ」
「だっ、だからってこの人数っ、有り得ねぇんだけど! 二対十数人ってッ!」
「大丈夫だーいじょうぶ。数人ぶっ飛ばして、後は逃げりゃいいんだから。ケイはチャリをぶっ飛ばせ。おっと、左肩は大丈夫か? 掴んでもOK?」
「左肩とか言っている場合じゃねえから! ほら早く掴まれっ、イデっ、あと優しく掴んでな……少しは考えて喧嘩してくれよー!」
「ストレス発散だって」
ニカって笑うイケメンに、俺はこめかみに軽く青筋を立てる。
おまっ……だから考え無しに行動はするなとチームから口酸っぱく言われるんだよ。
ああくそっ。俺、自発的に舎弟から降りようかな! ヨウの舎弟だと面倒事も多くなる!
かくしては俺はヨウをチャリの後ろに乗せて十数人の不良達と喧嘩……じゃなく、逃げ回る羽目になった。
俺達が学校に着いたのは昼休み始まった頃だったとかなかったとか。
やっぱり俺、自発的に舎弟から降りようかな。
口が裂けてもヨウには言えないけど、こいつの舎弟は心底に疲れる……いたく真面目な話、舎弟を降りたくなったのは俺だけの秘密だ。