青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
一方、ヨウとキヨタは相手方に見つからないように移動をしていた。手頃の電柱に各々身を隠し、向こうの様子を窺う。
能天気に談笑している池田は、「向こうは今頃大変だろうな」と一笑。
話の端々しか拾うことができないが、池田の上機嫌っぷりになんとなく談笑の内容を察してしまう。
池田はヨウの性格を十二分に分析している。
ゆえに荒川チームが全員で仲間を助けるべく、奔走していると判断しているようだ。
つまるところ、池田に自分の考えを読まれているのだ。
確かにケイに言われるまでは仲間を助けるために動いていただろう。
「たく……参ったぜ」
ヨウは苦笑を零す。
「ヨウさん?」
キヨタが不思議そうに見上げてきた。
「ヨウさんが負けるわけないっスよ? 何を弱気に」
独り言を弱音だと受け取ったようだ。キヨタが大丈夫だとガッツポーズを取る。
白髪頭のチビを頭にのせ、「俺自身の問題の話だよ」弱音を吐いているわけじゃないと頬を崩した。
「俺はすぐに周りが見えなくなる性格だ。そんな俺をいつもサポートしてくれる男がいてさ。あいつの気遣いを思い知らされたんだよ」
「ケイ……さんのことっすか?」
「あいつは喧嘩なんざできねぇ。
けどな、俺をよく理解してくれたんだ。理解してくれるから視野の狭い俺に状況を気付かせてくれた。どうすればいいか相談にも乗ってくれた。悪いところは容赦なく指摘してくれる。
そういう奴だった。
俺に必要な舎弟は、周りの状況を気付かせてくれる奴なんだろうな。っつーことでキヨタ、今の俺をサポートできるのはこの場にいるお前だ。期待してるぜ」
「うぇえ?」
素っ頓狂な声を上げるキヨタはそんなの無理だと言うが、無理でもやってもらわなければ困る。
自分に必要な舎弟はそういう奴なのだから。
焦燥感を滲ませるチビ不良に構うことなく、ヨウは右手を軽く挙げた。
すると隠れていた待機組が駐車場へと乗り込む。
突然の襲来に、不良達のどよめき声が聞こえたが、人数の少なさに池田は笑い、始末するよう命を下した。
「あっはー! 人数で俺サマに勝てると思ったら大間違いだぜ!」
すっかり口調が変わるワタルが先陣を切ってひとりの不良に殴りかかる。
ああなったワタルは気が済むまで喧嘩をしなければ、元には戻らないだろう。
シズとタコ沢も食って掛かる不良達を相手し始める。
あいつ等の手腕ならいけると睨んでいたのだが、意外なことに向こうの不良もやり手のようで苦戦を強いられている様子。
甘く見ていたようだ。それとも仲間を過大評価していたせいだろうか。