青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「ケイと舎弟になれて良かった。今もそう思っている。作ったことに後悔もねぇ。
けどな、テメェの気持ちを考えなかったのは俺が悪い。それは後悔している。ずっと苦しませていたんだと気付いて反省もしている」
「ヨウさん……」
「俺の中でケイとテメェは違う。決定的に違う感情が一つ、テメェには宿っている。ケイに無くて、テメェにあるもの。
何だと思う?
それはテメェが可愛い俺の弟分だってことだ。
ケイと俺は兄分弟分じゃねぇ。言うなればダチの関係だ。
ケイに弟分なんて言った日には笑われるかもしんねぇし、俺も兄分だと思ったことはねぇよ。
肩書き上、舎兄弟だから兄分弟分と口にしたことはあっても、心の底の関係はダチだ。
でもテメェは違う。
俺はテメェを弟分だって思っている。
こんな俺の背中を、テメェほどがむしゃらに追っ駆けてくれる奴、他にはいねぇよ。
弟分のテメェこそ、俺の後継者なのかもな。
怪我のこと、悪かったな。
だけどお前のおかげで助かった。サンキュ。テメェのおかげで俺は助かった……モト、これからも俺に手を貸してくれないか? テメェの力が必要なんだ。俺を支えてくれ。弟分として馬鹿な兄分を」
ヨウがモトに願い申し出る。
こんな形でヨウが誰かに傍にいて欲しいと頼むなんて初めてかもしれない。
付き合いが浅い俺でもヨウがこんなことを言う奴じゃないと知っている。
だからこそ驚いたし、あいつのことを尊敬もした。
あっ気取られていたモトの表情がクシャクシャになった。
うんっと頷き、また一つうんっと頷き、大きくうんと頷いてぽろっと涙を零す。
きっとモトの奴、嫌われる覚悟でヨウに胸の内を語ったんだろうな。
どんだけの覚悟して気持ちを伝えたんだろう。
モトにとって恐怖の塊でしかない気持ちを、どれだけの覚悟を背負って、尊敬するヨウに言っていたんだろう。
「ヨウさんの背中……追い駆けていて……良かった」
モトは嬉し泣きで体を震わせ始めた。
学ランの袖で涙を拭うモトに、
「悪かったな」
ヨウは軽く肩を叩いて謝罪する。
首を横に振るモトはヨウに何か言おうと、口を開くけど、出てくるのは嗚咽ばかり。
ずっと自分の気持ちと葛藤していたんだろうな。
病院の待合室にも関わらず、安心したように堰切って泣きじゃくっている。
「悪い。悪かった。ほんとごめんな。もっと弟分のことでぇーじにすっから」
兄分から腕で軽く頭を締められ、モトは嗚咽を噛み殺して相手に縋った。
嬉しさと、今までの葛藤を吐き出すように、ただただ嗚咽を噛み殺して泣いていた。