青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
三日後。
俺達の耳に吉報が飛び込んできた。
それは池田チームを潰したことにより、大幅に此方の情報が漏えいされなくなったという嬉しい知らせだった。
チームの情報屋を受け持っている弥生が掴んできた情報だ。信憑性はあるだろう。
これで少しは此方に有利な展開に流れたらいいのだけれど、なにぶん、俺達の対峙しているチームのリーダーは狡賢い策士。
一チームを潰したダメージがどこまで与えられたのだろう? 疑問が残る。
けれど今は喜ぶべきことだ。
池田も、怒れたヨウの恐ろしさを知ったようだし、今後は俺達に手出しをすることはないと思う。池田戦は一件落着だ。
さて、問題はチーム内で浮上している舎弟問題だ。
舎兄弟が解消された今、俺とヨウはただのチームメートだ。大それた肩書きはない。
だけど俺達の間柄に変化はない。
舎弟じゃなくなっても俺はヨウ達とつるんでいるし、ヨウは当たり前のように俺のチャリの後ろに乗ってくる。何も変わらない。
俺達は舎兄弟を結んだままの仲だ。
関係が変わっただけで、何も変わらない。
ヨウは誰を舎弟にするのだろう?
チームメートが早く結論を出せと急かす最中、ヨウはひたすら口を閉ざしていた。よって真意はあいつの胸の中だ。
こればっかりは俺も口を出せない。
一応俺も舎弟候補に選ばれている人間だ。
あいつが公平に舎弟を決めていたいと思っているのに、俺が茶々入れたら台無しだろ?
あいつの納得する答えを見出すまで、俺達は待ってやるべきだ。それが今後のチームのためでもあるのだから。
そうして時間を過ごしていた七日目の放課後。
帰りのSHRを終えた俺の下にヨウがやって来た。
身支度をしている俺に、「ちょっと付き合ってくんね?」と頼まれる。
てっきり一緒にたむろ場まで行こうと誘われるかと思っていた俺は申し出に驚いてしまった。
ヨウに連れられるがまま、教室を出た俺は何処に行くのだと相手に尋ねる。
すぐに分かるとイケた面で微笑まれた。
連れてこられた場所は体育館裏だった。
なんで体育館裏?
今日の昼休みだって此処に来たじゃないか。
いつも俺達がたむろっている憩いの場所を見渡し、此処に何かあるのかとヨウに聞く。まさか忘れ物でもしたのか?
ぽりぽりと頭部を掻き、相手を流し目にする。
イケメン不良はブレザーのポケットから封を切っていないチューイングガムを取り出し、それを投げては手の平でキャッチしていた。
繰り返される動作を眺めていると、おもむろにヨウがそれを放ってくる。
片手でキャッチした俺に、「やるよ」とイケメン。
ますます意味が分からない。これを渡すために此処に来たのか? べつにたむろ場でもいいんじゃね?
「俺の出した結論なんだ」
ミント味と表記されたパッケージを見つめていた俺の耳に飛び込んできたヨウの決意。
顔を上げると、
「ケイとの最初のやり取りは此処だった」
なら再出発もここからだとヨウ。