青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「面と向かって言うのはハズイけどさ」
照れ臭そうに頬を掻いて、眼に宿している光を和らげた。
「三度目だな。俺がテメェにこうやって舎弟になれって頼むの。
一回目はテメェが単純に面白いから。
二回目はヤマトにやられっ放しじゃ癪だからいけるところまでいく。そういう理由でテメェと舎兄弟になったっけ……今度の理由も違ぇけどな」
「ヨウ。それじゃ」
「ケイ、俺の舎弟はやっぱりテメェじゃねえと無理みてぇだ。
喧嘩ができるできねぇで舎弟は決められなかった。必要なのは俺の視野を広げてくれる奴。
欠点を無遠慮に指摘してくれる奴だ。
俺の欠点を指摘してサポートできる奴はテメェしかいねぇ。それに関しちゃキヨタもモトも自覚していた。
俺の欠点を指摘することはできねぇって。
テメェなら俺の欠点を知っているし、間違いを犯しそうになったら、的確な対処もしてくれる。そう信じている。
これから先の喧嘩は俺一人の力じゃ無理だ。チームを纏めたり、指示をしたり、色んなこと考えて日賀野に対抗していかなきゃなんねぇ。
でも俺は突っ走っちまう性格だ。熱くなって周りが直ぐ見えなくなっちまう。
その時、テメェが周りを見ろと俺に気付かせて欲しいんだ。ケイ、誰でもねぇテメェが適役なんだ。リーダーとしてもっと自覚していこうと思う。
苦手だけど頭を使ってヤマト達に対抗できるよう、仲間を守れるよう努力していきてぇ。だからケイ、俺の足だけじゃなくてリーダーの補佐をしてくれねぇか?」
呆気に取られていた俺は、ヨウの言葉に肩を竦める。
まーじイケメンって反則だよな。
こういうクサイ台詞も、イケメンが言えばカッコよく聞こえちまうんだから。
俺なんかが言ったら、ただのギャグだぜ。ギャグ。
そうか、ヨウは俺を選んでくれたのか。
手腕のない俺を。喧嘩ができない俺を。不良でない俺を……参ったな。折角重い肩書きから解放されたのに。
「俺は弱いぞ。ヨウ」
「んなの百も承知の上だ。手腕なんざテメェに求めてねぇよ」
「違う。内面の話だよ。俺は思った以上に見栄っ張りだ。そして臆病だ。いざという時に、お前等と一線の引いちまう馬鹿なんだ……俺さ、ぶっちゃけ言うとお前らの仲間だと思えなかったんだ」
相手の反応を窺うと、びっくらしているリーダーがそこにはいた。予想通りの反応だ。
「俺は俺自身が信じられない。だから仲間だと思えなかった。だって俺は弱いから。仲間だと思うことで足手纏いを認識することが怖かった。
でもただの繋がりなら、お前と俺が変哲もない友人なら、弱さを認めることも少ない――そうやって逃げている面があるんだよ、俺って」
そんな自分に嫌悪している。
微苦笑を漏らし、赤裸々に俺自身の素を曝け出す。
初めてだ。自分の内面を不良にあからさま見せるなんて。
でも言っておかないといけない気がしたんだ。新たな関係を築くなら、尚更さ。
「弱いことが怖い」
なにより弱さによって足手纏いだと言われることが、仲間に軽蔑されることが怖い。
だからいざという時に自分ひとりで解決してしまおうとする悪い癖が出てしまう。仲間に一線を引いてしまう。
ヨウに吐露し、力なく笑みを浮かべた。