青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「俺はきっと、これからもこの一面を引き摺る。断言できる。悪いと思っていても、土壇場でヨウ達と一線を引こうとする俺がいる」
でもこれからはチームで動くことが多くなるだろう。
それこそヨウ達に頼らなかったばっかりに後々に足手纏いなことを俺はしでかすかもしれない。チームに迷惑を掛けるかもしれない。
そして、これは厄介なことにそう簡単に直らない。自分でも簡単に直せそうにない。
けれど自分の悪い面にいつまでも泣き言を連ねている場合じゃない。
だってヨウは変わり始めているのだから。チームのために、俺達のために、自分のために。
じゃあ、俺も変わらないと。
「ヨウ、俺を舎弟にするなら頼みを聞いて欲しい。俺が一線引きそうになった時、それを止めて欲しいんだ。
俺、馬鹿だから一線を引くタイミングが自分でもよく分かってなくて、周りも見えていない。その時、ヨウが気付かせて欲しいんだ。舎兄としてズバッと言って欲しい」
静かに俺の話を聞いていたヨウは開口一番に言う。
「テメェが頼みごとをするなんて初めてだな」
俺も思っているよ。
こうやって不良に、いや友達に自分のことを頼んだことなんてねぇもん。
意見するのも恐いし、頼むなんて大それたこともできないし。
だけどヨウなら、頼めるような気がしたんだ。変わるための第一歩として、さ。
「テメェ、まだ自分が不良じゃねって思ってんのかよ? とっくに不良してんのによ。俺等よりかは地味だけどな」
ヨウは返事の代わりに俺にそう言って皮肉ってくる。
不意を突かれたけど、「思っていたよ」俺はおどけ口調で返してやる。
それだけで分かる。
俺達に新たな関係が築かれたってことが。
たった一週間だったけどさ、俺とヨウは舎兄弟じゃなくなった。
そして深い理由でまた舎兄弟になった。互いに欠点を気付かせる、なんっつーのかな、クサく言えば支え合う? 関係として俺達は新たに舎兄弟となった。
あーあ、これで舎兄弟白紙は完全にゼロだな。
チャンスだったというのに、自分から舎兄弟になっちまった俺って救いようもない。
とはいえ俺もいつの間にか不良の仲間入りしちまっている。
これで良かったのかもな。
いつものたむろ場所に向かうために、俺達は移動を開始する。
その際、ヨウは俺の背中を叩いて言ってくれた。お前は俺達の仲間だってさ。
なんだかくすぐったい気持ちになった。
気付かれたくなくて俺は誤魔化すようにガムの封を切り、ヨウに手渡しながら言う。
「サンキュ、兄貴」
これからまた舎弟として苦労していくんだろうけど、なんとかなるような気がしてきた。