青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「これで舎弟問題は解決だな。後はキヨタを説得すりゃ丸くおさまる。なに心配するなって。あいつだってアンタの理由を聞けば、分かってくれるさ」
「ああ、そうだと嬉しいな」
響子さんの励ましに、ヨウは小さく頷いた。
うーん。
多分、大丈夫だと思うけど……もしもゴタゴタになった時はチャリ勝負でも持ってくるかな。
ヨウの足として勝負すれば、キヨタも少しは納得してくれると思うし。
ただ池田戦で無理して肩を使ったから、また左肩が痛み始めたんだよな。
完治するのにどんくらい掛かるんだろう。
キヨタと一戦交えることができるかな。
左肩を優しく擦りながら俺は皆と二人を待つことにする。
皆が集まらないと集会が開けないから、俺達は談笑をして時間を潰していた。
それなりに時間が経った頃、ようやくモトが現れる。
「遅れました!」
相変わらず、ヨウ信者のモトは走って来るや否やヨウに頭を下げていた。
病院に行くなら自分に連絡をくれれば良かったのに、ヨウはついて行きたかったと胸の内を明かす。
滅相も無いとモトは首を横に振った。
崇拝してやまないヨウに付いて来てもらうなんてとんでもない、とモトは思っているらしい。
けれど心配されたことは嬉しかったらしく、照れ笑いを浮かべていた。
「ん? モト、キヨタと一緒じゃねえのか?」
問題のキヨタの姿が見えない。
ヨウの疑問にモトも驚く。
「あれ。まだ来ていないんですか? おっかしいな。あいつ、学校を途中で抜け出していたから此処にいると思ったのだけれど」
彼は軽く頬を掻いた。
「多分、あいつ、髪染めをしているんだと思います。尊敬している人と同じ髪の色をするんだって言っていましたし」
ま、マジかよ……よりにもよって今日髪染め?
ヨウは額に手を当て、
「どうすっかな」
どうやってあいつを説得しよう、と再び悩み始めた。
その一言でモトは事情が呑めたのだろう。
俺に視線を流すと、おもむろに歩んで胸に軽く拳を当ててくる。
「しっかりやれよ」
弟分のオレが認めてやるんだ。
下手なことをしたらシメると脅迫するモトの表情は柔らかい。
つられて一笑を零す俺は軽く両手を挙げた。肝に銘じておくことにするよ。
「うーん。オレはいいけど、あの様子じゃキヨタ……やばいかも。あいつ、まじで張り切っていたし。ここ数日、弟分や舎弟ばっかり口にしていたんだ。こっちが引くくらいに張り切っていたから」
「ヨウちゃーんモテモテだよねぇ」
揶揄するワタルさんが愉快気に笑声を漏らす。
この人、絶対に楽しんでいるな。他人事だと思って……当事者の俺やヨウは堪ったもんじゃないんだけど!
深いふかい溜息をつく新舎兄弟にチームメートも苦笑い気味だ(ワタルさんだけは楽しそうだけど)。
モトでさえ懸念を見せているのだから、きっと事は揉めるだろう。
気鬱を抱きながら一刻一刻を過ごす。
考えても仕方が無い。
まずは話し合うことが先決だ。
そう結論付けてキヨタが来ることを待つばかり。