青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「すみませーん! 遅れましたッス!」
問題のキャツが来た。
はてさてどうやって話題を切り出そうか。
まずはモトが遅いとツッコミを入れ、ヨウが爽やかに待っていたと笑顔を向け、その後に舎弟の話を出すしか……思考をめぐらせていた俺達だけど、やって来たキヨタの姿を見て驚愕の硬直。
絶句とは今の俺達のためにあるような言葉だ。
「えへへっ、染めちゃいました。似合います?」
鼻の頭を掻くチビ不良……不良だよな?
相手が本当にキヨタなのか確かめたくなるほど、キヨタはイメチェンしていた。
なんっつーか、ドハデな白から一変して、更生でもしたのかと問いたくなるほどの黒髪だ。真っ黒くろに染まっている髪のせいで言われないと、キヨタが不良だというのも分からない。
「脱不良でもしたのか?」
逸早く我に返ったモトが、親友を指差してクエッション。
「まさか!」
寧ろ、自分はこれからも不良を通すとキヨタは胸を張る。
確かに、ピアスとかはしているみたいだけど……すっごく地味になったな。
ほんっと地味だよキヨタ。
白髪のインパクトが強すぎた分、その髪は目立たない。
「キヨタ。お前、尊敬している人の髪と同じにすると言っていたよな?」
モトがおずおずと話を切り出す。
「おう」
だからして来たのだと自分の髪を抓み、あどけない笑顔を咲かせた。
おかしいぞ、ヨウの髪は金(+赤メッシュ)である。
なのにキヨタは黒に髪染めをしてきた、だなんて。
呆けているチームメートを余所にキヨタはまずヨウに頭を下げ、こう告げてくる。自分も舎弟を辞退すると。
自分から騒動を起こしておいてなんだけど、自分が騒動を起こしたのはすべてモトのためだった。
モトが舎弟を辞退した今、自分もヨウの舎弟に執着する必要は無くなった。
だから辞退する、キヨタはヨウに謝罪した。
「今でも尊敬する気持ちは変わらないっス。
だけどヨウさんなら、きっとケイさんを舎弟にするんだって思いました。お二人を見ていて、喧嘩の強さだけが舎弟になる基準じゃないって気付きましたから」
「キヨタ……俺の方こそ礼を言うぜ。テメェの起こしてくれた騒動のおかげで、大事な事に気付くことができた。サンキュ」
頬を崩すヨウに笑みを返し、
「俺っちも大切なことに気付けました」
キヨタは恍惚に手を叩いた。
「俺っち、不良なら手腕があってこそだと思っていたんです。
けれどそれは間違いだと知りました。大切なのは熱い気持ち、つまりはハートなのだと!
たとえ喧嘩ができなくとも舎兄のため、仲間のために突っ走る男こそ俺っちの追い駆けたい背中ッス。
あの人は俺っちに言ってくれました。
失敗を恐れる俺っちに『お前ならやれる。仮に失敗したときゃ俺も一緒だ。一人じゃない』と。なんて男前な人なのだろう、俺っちは大きな衝撃を受けました!」
願わくばあの人のような男になりたい、目をらんらんに輝かせるチビ不良が興奮気味に語った。