青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



俺は全力でココロの申し出に遠慮した。


このカゴは死んでも俺が持つ! じゃないと響子さんに地獄へ落とされかねない!


……それに、女の子に持たせられないじゃないか。

男廃れるだろ。地味な平凡男でもプライドくらい持っているぞ。


大丈夫とココロに笑い掛け、菓子売り場に移動した。



さてと菓子は何がいいだろう。

なにぶんシズが大食いだからな。大量に菓子は用意した方がいいだろう。


俺は適当にポテチやポッキー、プリッツ、クッキー等などカゴに放り込む。ココロも適当に商品を選んでカゴへ。


えーっと次は、あ、これは俺の我が儘だけどポテチのコンソメ味が食いたい。


あれ好きなんだよな。

今の入れたポテチ、のり塩だし。嫌いじゃないけど、一番はコンソメ味だ。あれも買ってこう。


割り勘する人数が多いんだ。多めに買っても支障は出ないだろ。


俺はコンソメ味のポテチに手を伸ばす。

手に取ったと同時に、もう一方からも手が伸びて手に取った。


「あ……」

「え……」


あらまぁ、お目当てのポテチが俺とココロで板ばさみになっている。

まさか一緒に取るとは思わなかったんだけど。今時の少女漫画でもこんな典型的な展開ないだろ。


いや少女漫画って読んだことないから分かんないけどさ。

何処の青春漫画の一シーンだよ、これ。


しかもときめいている俺がいるってのがなぁ。色々と終わっているよな。


俺達は顔を見合わせて微苦笑を零す。

ぎこちなく一緒にポテチをカゴに入れて、お互いに視線を逸らした。


えーっと、こういう微妙な空気が流れちまった時はどうすればいいんだ。

ノリよく「息合うな!」とでも言えばいいのか?

いやそれとも「ココロもコンソメ味好きなのか?」と聞くべき?


あぁあああ、どうしようかなこの空気。気まずい!



「私、ポテトチップスの中で……コンソメ味が一番好きなんです。ちょっと食べたくなって。ケイさんもお好きですか?」



うんぬん悩んでいるとココロが助け舟を出してくれた。喜んで話題に便乗する。


「ココロも好きなんだ。いや俺も自分が食べたいから選ぼうとしてさ。こういうのってお使いの特権だよな?」

「はい。だからお使いって嫌いじゃないんですよ。皆さんのお好きな物も知ることができますし。それに小さなことでも役に立ってるような気がして……私、ケイさんと違って喧嘩とかできませんから」

「あんまり自分を卑下しなくてもいいと思うけどな。俺だって喧嘩で役立っているかって言われたら、そうでもないし」


「そんなことないですよ。私、ケイさんと違って最初は……そのー……不良さんが恐くて恐くて。ケイさんのように普通に接することができなかったんです。

実を言うと私、昔からいじめられっ子で。中学までいじめられてたんです。
私の性格、じめじめでおどおどしてますし物事をハッキリ決められないので……皆さんに疎ましく思われてしまったんです。

高校に入っても私、なかなか性格を変えられなくて。

いじめられることは無くなったんですけど、なかなかお友達が出来ませんでした。それがとても寂しかったんです。


ある日の昼休み、たまたま体育館裏で煙草を吸っていた響子さんと話す機会がありました。響子さんと知り合えたことで、私はヨウさん達と知る機会を得たんです。


でもヨウさん達は見るからに不良、折角私を紹介してくれているのに響子さん以外とは上手く喋れなかったんです。

このままじゃグループで浮いた存在になってしまう。気鬱を抱いていた、そんなときです。

ヨウさんが気軽に話し掛けてきてくれました。

誰であろうと屈折なく話し掛けてくれるヨウさんのおかげで私は他の皆さんとも喋れるようになって……彼の笑顔には救われました」



< 288 / 845 >

この作品をシェア

pagetop