青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



ここは俺が払いたかったんだけれど。

いい顔を見せたいとか、そういう気持ち以前に、なんか彼女に支払わせた現実が苦い。


でも意地張ったって彼女は譲ってくれないだろう。仕方が成しに引き下がり、財布から出していた札を仕舞う。


一方でココロは嬉しそうに支払いを済ませていた。

役立てたことが本当に嬉しそう……健気だよな、ココロって。小さなことでも役立てたことに笑うんだから。



ふっ、前方から噴き出しそうな笑声が聞こえてきた。


硬直した俺が視線を持ち上げれば、ヤな店員が誤魔化すように咳払いをしている。が、俺の顔を見てはにやりにやり。

接客態度皆無である。


な、な、なんだよ、お前、その顔は!


「クレーム出すぞ。店員さんよ」


唸り声を上げる客の脅しなんてなんのその。 


「田山も羨ましい身分になったものだな。そうか、お前はとても分かりやすいな」

「なッ。それはどういう「250円のおつりです。ありがとうございました」


こ、こいつ~~~ッ! 

憤る俺に構わず、笑いを堪えたまま頭を下げてくる利二。

ぜぇーってぇ俺とココロの仲を疑ってやがるなあいつ。ちげぇからな。


俺、ココロとは同じ地味友でチームメンバーとか思っているだけだからな!



覚 え て ろ よ 。



口パクでそう言うと、利二にガンを飛ばしながら俺はココロと共にコンビニを出た。

後ろからクスクスと噴き出す笑声が聞こえたけど無視だ、無視。


反応して馬鹿を見るのは俺なんだしな。


ったく、みんな、そうやって誤解してくれているけど、俺とココロ、本当に何でもないのに。


何かあっちゃいけないっつーの。

俺自身でも気付き始めているけど、俺はこの感情を認めない。認められない。絶対にさ。


「重くないですか?」


声を掛けてきてくれるココロに俺は大丈夫と微笑を向けた。

二つに分けられた買い物袋の内、俺は飲み物が入っている重い袋を担当。


ココロは菓子類が入っている軽い袋を担当している。


内心、ちょい重いと思っているけどココロに持たせるわけにはいかない。


そんなことしてみろ、響子さんの鉄槌によって女にされちまう!


それにチャリまでほんの少しの距離。重いけど耐えられそうだ。


思案をめぐらせている間にも、あっという間にチャリをとめている文具店前に戻って来た。俺はカゴに買い物袋を乗せて掛けていた鍵を外す。


さてと買い物も済んだし、さっさと戻らないと。



あーんま遅くなったら、また皆がにやついた顔で、



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