青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



全員が昼食を食べ終わった頃(戻って来たキヨタはボロボロだった)、トレイを一箇所にまとめ勉強開始する。


教える側の四人は席を立って、追試組の勉強を見て回っていた。

中学組は中学組で一問一答形式で問題を出したり、採点したり、それなりに役に立っている。


二時間ほど経った頃だろうか。



「もう無理ぽ……ワタルちゃん終了のお知らせ」



ワタルが疲れたとテーブルに伏し、限界を訴え始めたため、休憩を挟もうとハジメが提案する。


それに皆が便乗したため一息することが決まった。ヨウ自身も休憩ができることに気持ちを緩め、大きく伸び。


慣れないことを長時間するものではない。肩が凝ってしまった。


疲れたとぼやき、肩を揉んでいると、「れ?」キヨタが周囲をキョロキョロと見渡す。

どうしたのだと尋ねれば、ケイがいないのだと言う。


そういえば先程から姿が見えないような……あ、手洗いに行くところを見たっけ。


しかしそれは随分前だった。

混んでいるのだろうか?


ヨウはそのことを思い出し、自分が捜しに行くと申し出る。

「俺っちも!」

捜しに行くと立ち上がるキヨタをやんわり制す。

大勢で捜すほど店も広くない。店内の何処かにいることは確かなのだ。


ここで待っているよう指示する。


しかしキヨタは不満げに声を上げ、自分も捜しに行くと主張した。


弟分として動きたいのだろうが、ヨウ自身舎弟とサシで話したい気持ちに駆られている。譲って欲しいところだ。

するとモトが何かを察してくれたのだろう。


「ヨウさんにケチつけるな。お前はここで待つんだ」


キヨタの頭をぐりぐり押えて無理やり身を引かせていた。

申し訳なさ半分、弟分に対する感謝に半分、気持ちを抱きながらヨウは早足で手洗いに向かう。


青色の人間のマークが記されている扉の前に立つ。


躊躇いなく木造を装っているプラスチック製の扉を押し開けると、そこにはひとりの人間の声で満たしていた。


他に人は見受けられない。


声の主はヨウが探していた舎弟だ。


電話をしていたらしく、向こうの話に相槌を打ち、うんぬん首を振っている。


「サンキュ。また何かあったら宜しくな」


ケイが別れの挨拶と共に携帯を閉じる。会話を終えたようだ。

声を掛けると、大層驚かせたようで彼が声を上げた。大袈裟な反応だとヨウは苦笑してしまう。


「ヨウ。勉強は? その様子じゃ小便しに来たわけじゃないんだろ?」


なんでここにいるのだと説明を求められ、休憩だと軽く肩を竦める。

嘘は言っていない。

今頃、チームメートは思い思いに時間を過ごしていることだろう。



「休憩だ。テメェこそどうしたんだ? こんなところで。途中で抜けていただろう?」


「ん、ああ、ごめんごめん。利二から連絡があったんだ……日賀野以外にも不穏な不良グループがいるらしい。だから俺に気を付けろって電話をしてきたんだ」



ヤマト以外にも不穏な動きが?


ヨウは眉間に皺を寄せる。地元で名が挙がっている有名な不良といえば、自分とヤマトくらいなのだが……自分達の地元は不良が多い方ではない。


不穏な動きをする不良がいたとしたら、いやでも名が耳に入ると思うのだが。

詳細の一切は分かっていないらしく、ケイ自身、また五木利二から連絡があり次第、報告すると告げてきた。


こればかりは情報を待つしかない。考えても無駄だろう。


ヨウは一報に頷き、後でシズにも連絡しておくと返した。

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