青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「すっげぇ助かるよ浩介。じゃあ、ポカリとゼリー系を買って来てくれないか? 粥は無理そうだから。金は兄ちゃんが立て替えておく。通学鞄に財布があるから、持っていけよ。母さんに後で請求するからレシートは忘れずにな」
「うん、分かった。兄ちゃんのためにパシられてくるよ!」
ウィンクしてベッドからおりた浩介は俺の鞄から財布を取り出して中身を確認。
「世の中不景気ね」
余計なことを言って財布を閉じると、元気よく部屋を飛び出した。
うるせぇな、どうせ俺の財布は常に金欠の危機だよ。
ヨウ達と合わせていたらマージ金がなくなるんだって。
笑声を噛み締めていると、閉められた襖が半開きになった。
顔を覗かせる浩介が忘れていたと言って、おどけた顔を作る。
「行ってくるわぁ。ア・ナ・タ」
ちゅっと投げキッスして今度こそ出て行く浩介。
つい声を出して笑ってしまった。
あのノリの良さは俺以上だ。将来、きっと兄を超える調子ノリになるだろうな。
再びベッドに身を沈める。
浩介のおかげで少しだけ元気を分けてもらった。
その気持ちで健太のことを考える。
中学時代いつも一緒にいた友人、毎日のように傍にいた親友と呼ぶべき同級生。
級友だった友人が旧友となり、ついには絶交の道を選択せざるを得なくなるだなんて。
失友の痛みはやがて頭や胸まで浸透する。
折角弟に元気を分けてもらったのに霧散してしまった。どうしようもない。
それは分かっているんだ。
健太のことはどーしようもない。
だから早く踏ん切りを付けたい。
俺はヨウの舎弟として、ヨウのチームメートとして頑張ると決めたんだからさ。
体内を駆け廻る血潮のように、痛みと切なさが全身を廻る。
外界から吹き込む風を浴び、日の暖かさに羨望を抱きながら俺は片腕に額をのせて目を閉じた。
火照った体の片隅で、じゅくじゅくと爛れたような痛みが宿り続けている。それは時間が経つに連れて化膿するばかり。
――遠のく意識の中で呼び鈴の音が聞こえた。
けれどそれは幻聴なのだと思い込む。
少しだけ、痛みから休ませて欲しい。