青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「――有り得ねぇ。だーれも出ないなんて。留守かよ」
さて、ケイの家にやって来たヨウとシズだが、何度呼び鈴を鳴らしても誰も出て来ないため、諦めて踵返しているところだった。
何度かケイの家に泊まりに来たことがあるため、彼の家までは容易に来れたのだが、誰も出ないとなるとどうしようもない。
居留守を使われている可能性もあるが、それさえ判断もつかないため諦めて帰るしかない。
「今から邪魔するって、メールで言ってみたんだけどな」
ヨウは荒々しく頭部を掻き、本人に会えなかった現実に嘆く。
これでは手も足も出ない。
「自転車はあったようだがな……」
シズは車庫に置いてあったケイの愛チャリを思い出し、苦虫を噛み潰したような顔を作った。
居留守を使われている可能性は大だ。
しかし本人もしくは身内が出てくれなければ、自分達は彼が家にいるのかどうかさえも確認することができない。
初っ端からの八方塞、出鼻を挫かれた気分だ。どうしたものか、本人に会わなければ意味も何もないのだが。
「ヨウ。あまり考えたくは無いが……」
もしやケイはヤマト達に接触しているのだろうか。
シズは疑念を口にしてきた。やはりシズも考えてしまったのだ。
ケイの裏切り、を。
「そんなことねぇよ」
ヨウは強く否定するものの、己の中に芽生えている疑心は簡単に摘めずにいる。
打ちひしがれているところを目の当たりにしているのだ。
もしかしたらヤマトに見透かされて傷心に付込まれてしまった、ということも考えられる。
(今の状況が辛ぇって言ってたもんな。ヤマト達のところに行かなくても、チームを抜けるってこともあるかもしれねぇ……けど今のチームにはケイが必要不可欠だ。舎兄弟を解消するわけにもいかねぇ)
なによりチームを抜けられたら、自分がショックを受ける。
ヨウは苦い感情を噛み締めた。
「ヨウ……情報収集をしてみよう。ケイと……馴染み深い人物は、いないのか?」
副リーダーに視線を投げる。
「自分達に胸の内を明かせず……チームメート以外の人物に……相談している可能性もあるではないか」
シズの意見に、ヨウはなるほど、と相槌を打った。
その可能性は十二分にある。
間接的にチームのことが関わっているのだ。第三者に泣きついている可能性も考えられる。
しかしケイと馴染み深い奴、馴染み深い奴、馴染み深い奴。
ヨウの思い付く人物はひとりしかいなかった。