青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―







「田山とは、ここ数日メールもしていませんけど」



大通りの一角にある、とあるコンビニ裏口前。

ヨウとシズはケイのクラスメートであり地味友で、チームメートにとって間接的な仲間でもある五木利二の下を訪れていた。


もっとも彼の連絡先を知らず、勤めているバイト先の場所しか認知していなかったので、利二と接触できるかどうかは大きな賭けだった。


たまたまバイト中だった利二を見つけ、二人は客の振りをして彼に声を掛けた。

勤務中の彼は二人の不良の出現に大いに驚いている様子だった(そして少しビビッている様子でもあった)。


頭の回転が速い利二は何かあったのだと察し、


「十五分待ってもらえますか?」


もうすぐ休憩だからと教えてくれる。

そのため十五分、コンビニの外で時間を潰し、利二の休憩時間を待って現在に至る。


「田山と連絡が取れなくなった?」


事情を知った利二は、眉根を顰めてしまう。

詳しい説明を求められたため、ヨウは簡潔に事情を説明した。ケイと山田健太の間柄のことを。


区切り区切りで相槌を打っていた利二は、すべての話を聞き終わると懇切丁寧に返事する。


彼と連絡を取っていないため、何も知らない、と。


「そんなことがあったことさえ知りませんでした。申し訳ないですが、お力にはなれそうにないですね」

「うそだろ、五木もダメかよ。お前が一番可能性的にでかかったのに」


また手が無くなった。


ヨウは地団太を踏む。

電話も駄目、メールも駄目、訪問も駄目、地味友も駄目。

自宅の電話番号が分かればそっちに掛けるのだが、生憎誰もケイの家の電話を知らない。


再び訪れた八方塞にヨウは軽く舌を鳴らすしかなかった。ここまで来ると苛立ちが募る。


「ヤマト達か……」


シズはますます疑念を口にし始める。

ヨウ自身も強く否定できなくなりつつある。


八方塞なのだ。


どうしても小さな可能性に目を向けてしまうのである。


「何を言っているんですか?」


ワケが分からないとばかり利二が険しい顔を作る。


「まさか田山が向こうのチームに寝返るとでも?」


なら笑えないジョークだと彼は言い切った。

それは有り得ない事だと明言する彼の瞳には、揺るぎない意思が宿っている。



「田山は貴方達のとても友情を大切にしています。
それは傍らで見守っている自分が保証しますよ。きっとメールさえもできない事情があるんだと思います。
田山はカッコ付けですが、連絡を疎かにして人に心配を掛けるような奴ではありません。あまり田山を疑わないで下さい、それとも田山が信じられませんか?」


ならば今まで彼の何を見てきたのだと、彼の口調が次第次第に厳しくなる。

眼光を鋭くする利二は意外と物申す奴らしく、言葉を重ねた。


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