青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



来た道を辿る二人は、再びケイにメールを送ってみる。


『今から家に行く』と。


しかし返信は一向にやって来ない。

シカトをされているのか、それとも気付いていないだけなのか。


後者の考えはないと切り捨てた。

連日に渡ってメールを送っているのだ。


ということは前者のシカトという考えしかないだろう。

ケイが自分達のメールをシカトするなんてよっぽどのことだ。


はてさて、どうやったらケイに会えるか。またケイに会えなかった時の仲間内への対処法をどうするか。 


二人は淡々と話し合っていた。


仲間内に疑心が芽生えていたら、それを素早く摘まなければ。

チームの輪が乱れるような事態だけは避けたい。


ヤマト達に隙を突かれてしまう。


こういう時、チームで動く難しさを覚える。


ひとりが不穏な動きを見せたら、伝染したかのように仲間内に不穏が広がってしまう。

単独行動にはない厄介な問題だ。


「難しいよな」


ヨウは頭の後ろで腕を組み、チームを纏める難しさを漏らす。


「ほんとにな……」


眠気を噛み締めながらシズは相槌を打った。


「その点、ヤマトはチームを纏めるのも使うのも上手かったな」


棘あるシズの独り言に、

「これから上手くなってやるよ!」

ヨウがムキになったのはその直後。

「それが余計不安なんだ……」

発言者が重々しく溜息をついた。

自分達のリーダーは後先考える事が苦手だから、皮肉を含んだご尤もな意見にヨウはぐうの音も出ない。


「最後にケイに会ったのはヨウ、お前だろ? ……どうだったんだ?」 


どう、と言われても傷付いていたしか言いようが無い。

見ていられないほど打ちひしがれていた。

あんなに弱り切ったケイは初めて見た。

利二と喧嘩した時でさえ、否、日賀野にフルボッコされた時でさえ、あんなに落ち込んだ彼を見た事は無かった。


だからこそ心配であり、不安でもあるのだ。

今のケイは崩れてしまいそうなのだから。


その不安が猜疑心に変わり、ヤマト達に移り気を漂わせたのではないかと心底思ってしまう。


そんなことする奴ではない。

利二に一喝されてしまい目が覚めたが……ケイへの猜疑心は心配の裏返しだと考えている。


心配ゆえにあれこれ至らんことまで考えてしまったのだ。

弁解かもしれないが、冷静に自己分析をしてみると先程の猜疑心はケイの心配から。


数日間、音沙汰なしなのだ。

弱り切ったケイを最後にしているのだから、心配するなという方が無理な話で。


逆の立場だったら、ケイはどう行動していただろう?


「俺は、分かってねぇな」

「ヨウ?」


「喧嘩はできっけど、なんっつーかそれ以外のことはからっきしだ。自分の非力さを目の当たりにしているかんじ。

仲間内のことだってよく理解してやれていない。しみじみ思う。

ケイもそうだし、今の状況を他の仲間はどう思っているのか……全部が分からなくても、何か掴めることくれぇはしてぇのに、俺は何もできちゃない。

テメェでチームの結成をしたっつーのに色々考えさせられる。

ケイは俺のこと『背負い過ぎる直球型』って言いやがった。よく俺のことを理解しているし、よく見ている。

んじゃあ、俺はどうだろ? 五木みてぇにあいつを理解しているかっつーったらそうでもねぇし。

寧ろ、五木に諌められた。舎兄のくせに何も出来てねぇや。

出来ているとしたら喧嘩くらいか?
初めて舎兄として何ができるだろう。そう、考える俺がいる。舎弟問題以上に、舎兄の存在意義を考える俺がいるんだ」



「……変わったな、ヨウ」


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