青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



フッとシズが笑声を漏らし、ヨウは少し変わったなと繰り返し告げてくる。


昔は状況が面白ければそれでいい。

仲間がピンチの時は手を貸して、自分の居場所を守り続けようとする奴だったのに。


ヨウは少し変わった。


単に自分の居場所を守り続けようとする奴ではなく、仲間のために率先して動くようになった。本当の意味で仲間思いになった。


今までも仲間思いだったが、それ以上にヨウは仲間のことについて親身に考えるようになった。


中学時代からの付き合いだ。

ヨウの変化は手に取るようにわかる。



「響子とも度々話す……お前は変わった。いい意味で……変わった。リーダーシップ、発揮できるようになっている。思い付きでの舎兄弟だったかもしれないが……作って良かったな。舎兄弟」


「――ああ、ほんと、そう思う。舎弟問題が勃発した時はどうしようかと思ったけど、舎弟を作って本当に良かった」



だから考えるのだ。

今度は舎兄が舎弟に何をしてやれるのかを。


ケイは望んで友人と決別したわけではない。

だからこそ利二の言うとおり、舎弟は無理をして爆ぜてしまったのだろう。


彼は何もかもが一杯一杯なのだ。



舎弟は自分で言っていた。


チームと一線引くところがある。


それは自分の弱さから。

悪い癖だということも理解している。


けれど実際、何かに直面した時、自己防衛から線を引いてしまうのだ。だったら自分にしてやれることは何か?


とりあえず、その線をまたいで消してやることが舎兄の役割なのかもしれない。


「ケイも勿論だけどよ。ハジメも……様子見している限り、あいつはあいつでケイと同じように一線引いているところがある」


仲間内のハジメも、ケイと同じように現在皆と一線引いてしまう面がある。

日賀野繋がりの不良達に奇襲を掛けられて以来、一人で思案しているところが度々見られるのだ。


思い詰めたように考え事をしている場面が多々見られる。

ハジメも自分の弱さを悟られたくなくて、仲間内に一線引いているのかもしれない。


「その線を消すことがリーダーとしての第一歩なのかもしれねぇ、シズ」


目尻を下げて同意を求めると、副リーダーは首肯した。


「ハジメのことは、自分も思っていた。あいつは以前から物思いに耽る事が多い。二人で纏めていくしかないな……リーダー」

「だな、副リーダー。ヤマト達以外にもやることは山積みだ」 


リーダーという存在は大変だ。ようやく分かってきたとヨウは笑声を漏らす。

傍らでシズは呆れ笑っていた。

楽してリーダーの仕事が務まると思っていたのだろうか、我がチームリーダーは。


なんて能天気なのだろう。


それがリーダーの良いところかもしれないが。

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