青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



此方の疑問にワタルさんが答えてくれる。


曰く、周囲の不良達に不穏な動きがあったらしく各々偵察に行っているらしいんだ。

響子さんはココロを待つために待機していたんだって。


そしてワタルさんは今、偵察から帰ってきたらしい。


その内、皆も帰って来るだろう。笑いながら、俺の肩に腕を置いてくる。

重い、肩が重いよ、ワタルさん。体だるいから重さが三倍増しになっている気がする。



「んもぉ、ケイちゃーんったらぁ、大袈裟に心配をさせるんだからぁ。あんれー? 体熱くない? まだ熱があるってヤツ?
それでも来てくれたってことはぁ、僕ちゃーんに会いに来てくれたのねん! もぉ、ケイちゃーんったら愛を行動で示してくれるんだからぁ!」



嗚呼、久しぶりに聞いたよ、ワタルさんのウザ口調。相変わらずウザッ!


あーでもワタルさんのウザ口調を聞いていると戻って来たなーと思える。


ほんと、一発目からワタルさんの相手はきついぜ! まだ病み上がりなのにさ!


「元気になった?」


ワタルさんの問い掛けに俺は頷く。

体は随分元気になった。


心は……やっぱまだ落ち込んでいるかもしれない。


だけどワタルさんに上手く大丈夫だと笑えた。笑えたと思うよ。


なのに、ワタルさんには通じなかったみたい。

彼は大袈裟に笑声を上げると、「ヘッタクソだねぇ」ウィンクして俺の腕を引いてくる。


二人きりになるために腕を引いてきたんだろう。

響子さんとココロから見えない死角まで俺を誘導すると、背後に立つ金網に寄り掛かった。


俺も必然的に金網に寄り掛かる。

ギシギシっと金網フェンスが悲鳴を上げた。


何を言われるんだろう。

久々にワタルさんと会ったから、妙に会話をするのが恐いな。


まずは謝罪か? 心配をお掛けしましたって。


心なしか身構える俺に対しワタルさんはレザージャケットから煙草の箱を取り出して口元に煙草を運んでいた。


「今のケイ見ていると、グループ分裂した時の俺サマを見ている気分になるな」


がらっとワタルさんの口調が変わった。


大抵、俺様口調の時のワタルさんは喧嘩している時か、キレれている時かなんだけど……今のワタルさんは表情が穏やか。


んにゃ、ちょっと哀愁漂っているかも。

ウザ口調のワタルさんと、俺様口調のワタルさん、どちらがワタルさんの素顔だろう?


「気持ちが板挟みになるんだよな。意見の合うダチを取って自分を偽らないようにするか、異見しちまっている親友に合わせるか。
まさにケイは俺サマと同じだ。結局俺サマは前者を取っちまったけどな。ケイも知っているだろ? アキラと俺サマの関係」


こっくり、俺は一つ頷いた。

そして思い出す。ワタルさんもまた俺と似た境遇に立たされていることを。


魚住昭。

ワタルさんの元親友。

今は日賀野チームに属す有望な情報屋。


現在は仲が悪いみたいだけど、親友だった事実と過去は変わらない。

こんなことを聞いちゃいけないのかもしれないけど、どうして仲が悪くなったんだろう。二人って。


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