青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
ワタルさんと一緒に重い足取りで響子さんやココロがいた場所まで戻る。
目に飛び込んできたのは落ち着きを取り戻した響子さんとホッと胸を撫で下ろしているココロの姿。
そして偵察から戻って来たであろうシズやモト、それにギャンギャン吠えているキヨタ。
「ケェエイィイさーん!」
なりふり構わず大声で名前を呼んでくれちゃってもう……ご近所迷惑だろ。
額に手を当てて項垂れていると、「ウアァアアアン!」絶叫と共に猪突してくる不良一匹。
ゲッ、あいつ。
全力疾走してきてやがる……馬鹿っ、たんまたんまたんまっ! キヨタ、少し減速しないと止まれっ、ドンッ、ズッテーン、バッターン!
……嗚呼、俺、来て早々死ぬかも。昇天するかも。
目の前には青空。ポッカリ白い雲。
優雅に舞う小鳥さんたち。地味ボーイは今、地面に転がって空を見上げてるなう。
ダサい?
おう、何とでも言え。俺は元からダサイんだよ! 地味ダサイの何が悪い! これでも毎日を精一杯生きている人間でい!
「わぁあああごめんなさい! 勢い余ってケイさんにぶつかったっス! 大丈夫っスか?!」
見事に突進してぶつかってきたキヨタが顔を覗きこんでくる。
大丈夫に見えますか? 見えませんよね?
ええ、見えてたまりますか。
俺、キヨタの剛速球並みの突進を食らってその場に倒れたんだから。こちとらぁ病み上がりなんだけど。
「アイテテ」
上体を起こして呻く俺に何度も謝罪してくるキヨタは、目を潤ませて「会いたかったっス!」熱烈に歓迎してきた。
「お、俺っちっ、ずっと寂しくてっ。ケイさんっ、入院ッ……ううっ、ケイさぁあああん! 此処にいるってことは入院しなくて良かったんっスねぇえええ! 良かったぁああああ!」
「キヨタおまっ、くっ付いてくるなってっ!」
悲鳴を上げる俺に構わず、キヨタは会いたかったとキャンキャン吠える。
ちょ、嬉しいのは分かったし、寂しい思いさせたのも悪かった。
俺がわるうございました。
だから離れてくれー! 野郎に抱きつかれて喜ぶ野郎が何処にいるー!
……駄目だ、離れる気配が無い。
ああもう好きにしてくれ。好きなだけ俺の胸で泣け。好きなだけ貸してやらぁ! ははっ、俺って寛大! おっとこまえぇ! んでもって結構なまでに俺、キモーイ!
ふー……吐息をついてキヨタに目を向ける。
良かったと何度も言って縋ってくるキヨタは本当に心配してくれたみたいだ。
「良かったっス」
本気で泣きそうだった。
なんだか……罪悪感。ココロの言うとおり、心配を掛ける方が迷惑よりよっぽど迷惑なんだな。
「ケェエエイィイイ! お前っ、キヨタに何、寂しい思いさせてんだコラァアア!」
うっわぁー……うっるさいのがもうひとり突っ込んで来るよ。
吠える不良その2は俺の前に立つや否や、
「この野郎。休み過ぎなんだよ!」
ギャンギャンと喚いてきた。
おいおい勘弁しろってモト。俺、ほんっとまだ病み上がりなんだから。まだ微熱もあるんだ。遠吠えが頭に響くっつーの。
騒がしい環境が出来上がる最中、副リーダーのシズが早足で俺に歩み寄って来た。
「もう大丈夫なのか……」
欠伸を噛み締めながら心配を垣間見せてくるシズに、
「まだ微熱はあるけどさ」
俺は正直に体調のことを告白した。
こんなにも心配してくれたんだ。
ここで無理に大丈夫と突き通しても、後々余計に心配を掛けるだろう。
でもちゃんと付け足して、病院に行って来たから大丈夫とシズに告げた。