青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―







――きりーつっ。



大きな欠伸を一つ零し、俺は学級委員の横野の号令に合わせて皆と一緒に腰を上げる。

担任に頭を下げているのか下げていのか、微妙な態度で担任に気の抜けた声で挨拶をした俺は、終わった同時に大きな背伸びをした。


やっと今日一日のハードな学校生活が終わった。

正直、今日の学校生活はシンドかった。


午前中はずっとヨウ達とふけていて恐い思いをしたし。

昼休みは赤髪の不良さまに追い駆けられるし。


午後の授業は無事に出ることがデキたけど、午前中と昼休みの疲れがドッと出たせいで眠くて眠くて仕方が無かった。


そういえば、午後の授業にどうして出られたかというと、ヨウが午後の授業は出ると言ったからだ。


授業に出ても寝るだけだけど、出席日数の問題があるからとかなんとか……そんな心配するなら最初っからサボらなきゃイイのにな。

欠伸を噛み締めて、身支度をしていると利二が俺に声を掛けてきてくれた。


「大丈夫だったか?」


「おー、大丈夫ダイジョウブ。どうにか助かったよ。そうだ、透。昼休みはサンキュな。あの時のお前、カッケーって」

「地味に活躍したでしょう?」


悪戯っぽく笑った透は俺と利二に「じゃあっ!」手を振って、教室を出て行く。

透は美術部だ。

きっとこれから美術部で絵を描くんだろうな。

あいつ美術系に興味があるみたいで、地味に美術系の話は詳しい。

美術系の話をする時はスッゲー楽しそうなんだ。


俺、画才とか無いから絵を描く楽しさとか芸術の深さって分からないけど。


ちなみに光喜は、既に部活に行っていて教室にはいない。


今日は急いでいかないと先輩達にシバかれるそうだ。

シバかれるなんて物騒な言葉だけど、光喜自身は部活楽しそうだから先輩達に可愛がられているんだと思う。多分。


俺と利二は帰宅部。

つまりどの部活にも所属していない暇人野郎だ。

とはいっても、利二はこれからバイトなんだ。コンビニでバイトしているらしい。


どうしてバイトしているかって、そりゃ小遣い稼ぎ。

深い理由はないと利二は言っていた。


「利二。時間、大丈夫か?」

「少しヤバイな。走れば間に合うとは思うが」

「じゃあ、直ぐに行けって。時間ヤバイんだろ?」


利二は頷き、通学鞄を肩に掛ける。

教室を出て行く際、利二は俺にこう言ってきた。



「あんまり厄介事に巻き込まれるなよ」



それは嫌味なのか?

それとも純粋に俺の心配をしてくれているのか?


あまり嬉しくない利二の言葉に、俺は唸り声を上げてしまう。



もう既に厄介事に巻き込まれているような気がするんだけど……そう、ヨウの舎弟になってから。



思わず溜息をついていると、クラスメートのひとりが俺に声を掛けてきた。


「ナニ?」と聞けば、教室の出入り口を指差して真っ青な顔をする。


俺もカラダが硬直してしまった。


クラスメートは、用件は伝えた! とばかりに一目散に教室から逃げ出してしまう。


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