青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
そしてそれはその場限りのことではなく、翌日から毎日のように話し掛けてくれた。
昼食を一緒に食べようと誘ってくれたのも彼からだった。
田山圭太には既に一緒に食べる友達がいたのだが、彼は自分を紹介してくれた。
「冷静ツッコミ担当」
奇妙な紹介文で光喜や透に自分を紹介してくれた。
彼を含む紹介してくれた二人の会話は最初からぶっ飛んでいた。
それに対して意見すると、彼等は“ドライなツッコミ”と捉え、自分を輪に入れて会話を広げてくれる。
会話の苦手だった利二にとって、初めての体験であり、このような会話が自分にもできるのだと心が穏やかになった。
こんな自分を受け入れてくれる奴等がいるのだと初めて知った。
常に己を苛んでいた孤独感が拭えた。
誰よりも自分と会話してくれたのは、やっぱり彼、田山圭太だった。
勉強が分からないと泣きついてくる彼に数学を教えたり、当たり前のように世間話を振られたり、それに返したり、また自分からも話し掛けるようになったり。
家が窮屈だと彼に愚痴を零したこともある。
何となくだが家が窮屈に思える。そう愚痴を零すと、ケイに『利二の家って泊まりOK?』と聞かれた。
驚く間もなく、
『俺の家に泊まりに来ないか? 家が窮屈なら遊びに来いよ。来てくれたら俺も楽しいからさ』
ケイは笑声交じりに誘ってきてくれた。
泊まりの誘いなんて初めてだったものだから、やけに嬉しく思う自分がいて、
『迷惑にならないのか?』
どぎまぎしながら聞いたものだ。
『大歓迎!』
彼はそうやって自分自身を受け入れてくれた。
彼のおかげで自分は学校生活に色が付いた。
彼が自分に話し掛け(その度に自分の素っ気無い部分をクールと言ってくれ)、
彼が自分に面白いと言い(自分の簡単な言葉をツッコミだと笑い)、
彼が自分に友達を紹介してくれ(冷静なツッコミ担当ゲットだぜと光喜や透に紹介してくれ)、
彼が自分に泊まりに来いと誘ってくれ(自分が来てくれたら嬉しいと笑ってくれ)、
誰よりも彼が自分を必要としてくれた(昨日も今日も明日も当たり前に呼んで名前を呼んでくれる奴がいる)。
今までドライな学校生活を送っていた。
どことなく孤独感を抱きながら毎日を送っていた自分にとって、今の学校生活が一番楽しいのだ。
あの日あの時あの場所で、彼とペアになり、自分に話し掛けてくれたことがすべての始まりだった。
あんなに人間関係にドライだった自分が、こうやって誰かに関わり身を案ずる。
そんなこと一度たりともなかったのに。
彼が自分を必要としてくれるもんだから、自分も変わらざるを得なくなった。