青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
赤髪の不良さまの鋭い視線に、俺はもう既に逃げ腰。
けど、ヘタレでもチキンでもない!
一般凡人学生が不良から睨まれたら、こんな反応を絶対取る! 断言できる!
俺はさっさと教室を出ようと赤髪の不良さまに背を向けて、教室を飛び出そうとしたが、肩を思い切り掴まれた。
「おい、ゴラァア。テメェのせいで妙なあだ名を付けられたんだぞ」
「ッ、あだ名? いやぁ、俺、まだ貴方様のお名前とか知らないので何とも」
「ふっざけんなー!」
「ギャー! すんませーん!」
ギャーギャー騒ぐ俺に、赤髪の不良さまが舌打ちをして肩から手を離してきた。
心臓がバックバクバクいっている。
ヤバイ、俺、自分の心臓がその内、恐怖のあまり壊れそうな気がする。
俺の様子に赤髪の不良さまが呆れてきた。
「テメェ。そんなんで荒川庸一のッ、ヨウ……さんの舎弟なのか?」
「な、な、成り行きだっつーの。俺が頼んだわけでもなく、成り行きで舎弟にッ……はぁー」
「フーン。成り行きかよ。けど、あいつの舎弟になったってことは、お前、相当厄介な事になんぞ?」
俺は思わず赤髪の不良さまを凝視してしまった。
「相当厄介? 今以上に?」
「はあ? 今のどこが厄介だ?」
馬鹿だろ、お前っていう眼で見ないで下さい。微妙に傷付きます。
赤髪の不良さまは、変にワザとらしい溜息をついてきた。
「あいつは俺達不良の中じゃ、相当有名だからな。その舎弟となっちゃ、テメェもその内なぁ。厄介事なんて可愛らしいもんじゃ、って、おい!」
「やべぇ眩暈が」
これ以上の厄介事が待ち受けていると思うだけで、田山圭太の目の前は真っ白になりそうだぜ。
フラッとヨロけて俺はそのまま、机の上に座り込む。
「俺は地味で平凡で日陰人生を全うしていただけなんだ神様は俺に何の恨みがあってこんな仕打ちをなさったんだっ……神様の馬鹿野郎」
「おい、ブツブツ延々と独り言を唱えているんじゃね。不気味なんだゴラァア」
「取り敢えず、明日からキンパで頑張ってみよっかな。うん、俺も不良になれば……なれる度胸なんてねぇって。なあ、あんたはどうやって不良心を呼び覚ましたんだ?!」
もう赤髪の不良さまをあんた呼ばわり。
それほど俺は色んな意味で追い詰められているってことだ。
だってよぉ、赤髪の不良さまが「これ以上に厄介事が起こる」なんて言ってくるんだぞ? そりゃもう、色んな意味で精神的に追い詰められるだろ。
赤髪の不良さまは「そうだな」と腕を組み、俺を見据えてきた。
「取り敢えず、」
「取り敢えず?」
「昇降口に行け。さっさと行かないと俺が荒川庸一……ヨウ……さんに、とやかく言われる」
微妙な、沈黙が俺達を襲った。