青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「つい最近、池田チームが壊滅したとです。
あ、自分、所々訛りが入ると思うのですが、気にせんといで下さい。
なるべくは標準語で話すよう努めますんで……で、話は戻るんですが、極々最近の話、池田邦一率いる不良チームが壊滅しました。
奴等は此処から15分ほど歩いた先の商店街を支配下に置いていたチームなのですが、壊滅したことによりエリアは完全フリーとなりました。
知っているかもしれませんが、寂れた商店街エリアは不良の巣窟になりやすいです。
商店街自体が寂れてますんで、そこに住居を置く奴も少ないですし、元から治安が悪いんで店と実家を別個にする奴も多い。
補導員の目も掻い潜りやすいですし、他校の教師達もそうは足を踏み入れない地。
真夜中に馬鹿騒ぎしてもそう簡単に通報は入りません。
まあ……つまりは商店街エリアは不良達がたむろするにはもってこいの場所です。
付近の不良達は寂れた商店街エリアを『廃墟の住処』と呼んで、我が物のエリアにしようと虎視眈々狙っていました。
しかし今までは池田邦一率いるチームがエリアの一切を支配していました。
誰も池田チームには逆らおうと思いませんでした。
というのも池田チーム自身に畏怖の念は感じなかったものの、誰もが奴と繋がっているある不良チームに怖じていた。
奴等はこの辺りで有名過ぎる不良チーム、日賀野大和率いる不良チームと繋がりを持っていたとです。
日賀野チームに対抗するほどの力を持っていないと自覚していた。
プラス、池田の悪知恵に誰もが廃墟の住処に手を出そうなんて思わなかったとです。
手を出せばどうなるか馬鹿でも分かりますから。
ばってん、池田チームは壊滅しました。
今までエリアを狙っていた不良達は爆ぜたように、そこを我が物としたとです。
ある意味、今の寂れた商店街はエリア戦争と化してるとです。
自分達チームも参戦しているため、四チームが今、商店街のエリアを分割して支配。相手の陣地を奪おうとしている状況になるとです」
「そういや、この頃不良達の間でテリトリー争いをしている噂が立っているな」
ヨウの呟きに、俺はそうなのかと瞠目。
「知らないのかよ」
近くに座っていたモトに毒づかれた。
それでもヨウの舎弟なのかと付け加えて。
いやそんなこと言われても俺、基本的にご近所の不良の内情なんて知らないし。
日賀野チームで手一杯だぜ!
俺は日賀野チームだけでお腹一杯だ! おかわりはいらない!
「話は……ある程度分かった。要するにエリア戦争に加担して、お前等の肩を持てということだろ? ……だが自分等と手を組む理由が見えない」
小さな欠伸を漏らし、副リーダーのシズが意見。
ご尤もだと思う。
別に俺等と手を組む必要性は無いんじゃないか?
そりゃこっちには腕っ節の強い輩が多いけど、俺等も日賀野達のことで手一杯。
あんまそういうヤヤコシイ問題に関わりたくない。
協定は嬉しいけど、喧嘩の数が多くなるのは俺達としては痛手だしな。
手を組むべき理由を求めると、
「チームの一つを確実に潰すためか」
それまで不機嫌に口を閉ざしていたタコ沢が口を開く。
今日も奴の頭はゆでだこのように真っ赤だ。口が裂けても言えないけれど。
タコ沢は意外とご近所の不良事情を知っている。
フンと鼻を鳴らしながら、説明側に立っている涼さんに視線を投げた。
「エリア戦争は浅倉を筆頭に、刈谷、榊原、都丸チームが関わっているって話だゴラァ。お前等、元々榊原とはチームだったって話を聞いたが?」
「ご名答」
浅倉さんは口角をつり上げた。