青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
「遅ぇ。何していたんだよ」
昇降口には不機嫌顔を作っているヨウが、俺のことを待っていた。
不機嫌顔な不良って、やっぱり恐いよな。
何かちょっとしたことでカチンってきて殴られそう。
俺は両手合わせて必死に謝る。
人間、全身全霊で謝るのが最善の手だと俺は思うぜ。
ヨウは俺に怒っているようじゃないみたいだけど、ブツブツなんか文句を垂れていた。そしてヨウは赤髪の不良さまにガンを飛ばす。
まさか、手を抜いて仕事をしたんじゃ? って目つき。恐ッ。
恐怖心を抱いている俺とは対照的に、赤髪の不良さまは「俺はちゃんとした」とぶっきら棒に腕を組んだ。
ヨウに負けたくせに、なんでこの人は喧嘩腰なんだろうか。またヤラれたいのだろうか。
「どうだか」
ヨウは呆れた。
赤髪の不良さまは口元を引き攣らせながら、「ちゃんとしたっつーの!」って反論してる。
この人、負けたくせに口答えするって度胸はあるよな。
「タコ沢。もう少し使えるようになれよ」
「だぁああっれが、タコ沢だ! 俺の名前は谷沢。谷沢元気だ!」
「谷沢元気?」
「ああ、こいつの名前」
めっちゃ意外。
赤髪の不良さまの名前、元気っていうんだ。
何だか可愛らしい名前。
しかもある意味、本人にぴったりだ。
威勢のイイところとか、メチャクチャ吼えるところ(と言ったら俺、ぶっ殺されそうだけど)とかさ。
で、どうしてタコ沢? 首を傾げる俺に、ヨウの不機嫌面が崩れた。