青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



「なんだテメェ等」


近くのビリヤード台に腰掛けていた不良数人が俺達にガン飛ばしてくる。


おわぁあああ、恐い、怖い、KOWAI!


射殺しそうな眼が俺のハートをビビらせているんだぜ!


いつでも何処でも不良と一緒だけど、不良慣れなんて一生できないんだぜ! 帰りたいんだども! 半べそを掻く俺を余所に、リーダーが雄々しく話を切り出す。 


「浅倉に話がある。通してもらいてぇんだが」 


向こうから舌打ちが聞こえたのはなしてでしょうか?


「あーん? 和彦さんに? ……テメェ等、エリア戦争に関わってる回しもンだろ? だったら容赦しねぇ。おい」


不良達が臨時態勢を取り始める。


話がある=回し者。


それっておかしい図式だと思うのは俺だけじゃないよな。


話があると言っているだけなのに回し者の容疑が掛かっちまうなんてありえないんだけど。


ちょ……不穏な空気が漂ってきたよ。これは訪問早々喧嘩のニオイか。


だったら喧嘩っ早いな、不良って!

警戒心を募らせている複数の不良達のガンを受け止め、


「めんどくせぇ奴等だな」


ヨウが悪態をつく。

それにより、空気が一層悪くなったのだけれど、リーダーは場慣れているらしく、やや声音を張って目的を告げた。


「浅倉に協定の件で返事しに来た。そう伝えろ」


憮然と肩を竦めるヨウに対し、ガンを飛ばしていた不良達の空気が変わる。


警戒心を抱いたまま、俺等の身の上をしっかりと確かめてくる。


「協定? じゃあ、お前等、荒川チームか」


「そうだ。浅倉はいるか?」


「少し待ってろ」


不良の一人がビリヤード台から下りて、颯爽と部屋の奥に向かう。ビリヤード場は二部屋あるみたいだ。


俺達が荒川チームだと分かった瞬間、周囲の不良の皆様方の空気が緩和。不穏は霧散していた。

良かった、どうにか喧嘩にならずに済んだみたいだな。

喧嘩になったらどうしようかと……これもそれもあれもワタルさんがウザ口調でご挨拶するから。


取り敢えず、俺等は向こうの動きがあるまで出入り口で待機。

全員ビリヤード場に入って向こうの返事を待つ。


その間、痛いくらい浅倉チームの視線を浴びる羽目になって、息苦しいのなんのって逃げ出したい空気だ。ヒソヒソ声も聞こえてくる。


「あれが荒川か」「噂には聞いてたが」「地味だな」


まあまあ、なんか誤解されているような気がしてならない会話に、俺は顔を引き攣らせる。まさかだと思うけどさ。


「カモフラージュとしては完璧だな。ありゃ敵も欺ける地味ダサくんだ。思わずカツアゲしたくなるもんな。いやぁ策士だな、荒川。で、あいつの舎弟は?」

「噂じゃそこの赤メッシュらしい。美形だな、あいつ。向こうの方がリーダー格に見える。知っているか? 荒川とその舎弟って夜な夜な、二人で族と会っているらしいぜ」

「マジかよ。族ってやばくね? そりゃ日賀野チームと渡り合える筈だよな。噂によると先公をリンチしまくっているそうだな」


「らしいぜ。超キレ者らしいぞ」


俺等の評判、最悪じゃないか。身に覚えのない噂まで立っているし。

族? ンなのに関わったら最後、田山圭太は極道に走るぜ!


……嘘、関わったその瞬間、俺は警察に逃げ込むぜ! 自分と命一番だろ!


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