青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―



「はい。ヨウ、俺からもいいか」


前者に倣い俺も挙手した。


「なんだケイ?」


流し目にしてくる舎兄に対してこう意見する。


「戦法はヨウたちが立てるんだろう? だったら地形もまとめてした方が時間短縮にならないか?」


でないと俺中心に戦法立てる羽目になる。

今まで学級委員、応援団、生徒会員等など、目立つ仕事を避けてきた俺が、俺が、おれが中心になって戦法を立てるなんて恐れ多いにもほどがある。


「確かにご尤もだが、俺達が立てる戦法はチーム同士がぶつかった後のことだ。
一方、ケイ達に任せたいのはぶつかるまでの過程。

今回は特に地の戦法が必要になってくる。
俺達はぶつかった後の戦法を集中的に話し合いたい。

つまり、その前の流れはテメェ等に任せたいんだ。ケイ、テメェが中心になってやれば安心だ」



「んなこと言っても、俺」


人についていく、合わせることが得意なのに……まさかの司会進行役がくるなんて。


尻すぼみする俺の心境を悟ったのか、


「自信持てって。俺の舎弟はやってくれる男なんだ」


人の首に腕を回してニッとイケた笑顔を向けてくる。

「テメェ等も期待しているぜ」

不良だから、地味だから、そんなの関係なしに俺等チームメートに期待を寄せてくるリーダーは本当に俺等のリーダーだった。

心の底から俺等に信用を置いてくれているんだな、ヨウ。

友情を感じるぜ……涙も誘うほど熱い友情を感じる。


だけど反面、プレッシャーがな!

そんなに期待をされても困るんだぜ!


俺に務まるかなぁ、司会進行役! ああああっ、胃がいてぇ!


そりゃ内輪で話し合うから別にいいけど……。


「荒川、こっちもチームを分担した。お前等の分担グループと合流させてくれ」

「ああ、分かった浅倉」


ねえ、圭太、お聞きになりました?

向こうのチームの人と合流でやるんですってよ。


いやそりゃそうですよね、協定を結んでいるんですから。


でも圭太、大丈夫? 向こうの皆様、みーんな不良でございますわよ。

戦法は置いときましても、なんたって地形に詳しいのは圭太なんザマスから、不良様方に説明するのは圭太本人なんザマス。おほほほほ。


……父さん、母さん、弟の浩介!

田山家長男、田山圭太は今日、学級委員並み、いやそれ以上のお仕事をして参りますね!


命があったら、今宵また顔を合わせましょう~~~っ、うわぁああっ、胃がいてぇええよ!

無理やり学級委員……いや、生徒会長の仕事を押し付けられたみたいに責任の二文字が重く両肩に圧し掛かってくる! おつ、俺乙だぁあああ!


頭を抱えて身悶えている俺の肩にポンッと手が置かれた。

振り返れば、浅倉さんの舎弟桔平さんがにこやかスマイル。


「まずは地形の説明、宜しく」


桔平さんの向こうに俺よりもガタイの良さそうな、んでもってドハデなアタマしたカラフル不良数人。


くうっ、なんなんだお前等、同じ十代後半とは思えねぇナリしやがってからにコンチクショウ!

そんなに俺のリーダー素質を目覚めさせたいか。開花させたいか!


そんなものな、これっぽっちもな、ねぇんだぞ! 胸張れるんだぞっ!

けどな、男にはやらなきゃなんない時がある。そう、やらねばならない時が!


だがしかーし!

やらねばならいその前に、人には心の準備時間が必要なのである。


それなしに行動を起こせば、次のようになってしまうので注意だ!


「じゃあ……まずは皆さん……ええぇえっと話を聞きやすいよう円にでもなりましょーかー? な? モト!」

「ん、いいんじゃね?」


「その後は質疑応答の時間に。な? モト!」

「べつにいいと思うけど」


「てかこれでいいのかな?! モト!!」

「……どーしてさっきからオレに振るんだよ」


「独断より協調性! ニッポン大衆国! ひとりよりふたり、みんなの意見尊重! 赤信号、皆で渡れば怖くない! OK?! 答えはハイもしくはイエスで!」


「……アンタなぁ。ヨウさんの舎弟でやってきているんだろ? テンパるなって……しっかりしろよ。ココロもさ、ケイになんか言ってやって」

「え、あ……えーっと、が、頑張って下さい、ケイさん。ケイさんならできます!」


「~~~ッ!! あーうーっ、ちょっ、期待がよりプレッシャーというかなんというか。俺ならできるっ……ジミニャーノ、期待されているぜ。どうするよ、どうしようもねぇ。

やるっきゃねぇ。俺はいつも舎兄に鍛えられているわけだから、頑張れる。

いやでも鍛えられてるのは足だろ。
必死にチャリを漕いでるわけだしッ、ああっ、プレッシャーで死ねそうッ」


ぐわぁあっと頭を抱えてしゃがみ込み苦悶する俺。

「えっとえーっと」

言葉を誤ったかとオロオロするココロ。

「しまった逆効果か」

しっかりしてくれとばかりに脱力するモト。

ポカンとしている向こうのチーム数人。

皆様に大変ご迷惑を掛けることになりましたが、俺が復活するまで一分弱掛かりました。

いや、心の準備ができてなかったんだから仕方が無いよな? な? ……皆様、ご迷惑掛けました。スンマソです。


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