青騒のフォトグラフ―本日より地味くんは不良の舎弟です―
夕食後。
ヨウは風呂へ。
俺はヨウの寝巻きを用意した後、自室に入って寝床の準備をしていた。
簡単な作業だからあっという間に終わる。暇だ。
手持ち無沙汰になった俺は買い置きの充電器の封を切って乾電池を入れると居間に戻り、放置されていたヨウの携帯を充電してやることにした。
そういえばヨウの奴、財布も持たず、携帯だけ持って飛び出したと言っていたけれど……ンー、明日も学校だぞ。
あいつ、鞄はどうするんだ?
取りに帰ることも無理なんじゃね? 雰囲気的に。
どーするんだろう?
ヨウの携帯を持って、自室に戻った俺は机にそれを置いてベッドに腰を掛ける。
さほどスプリングが利いていないベッドに寝転がり、無心に天井を見つめることにした。
あることについて考えれば考えるほど、思考が底なし沼にハマってしまう錯覚に陥る。
つまり、いつまで経っても答えの出ないことでぐるぐるしてしまうんだ。
(もしもの未来、か)
暫くそうしていると、襖の引く音が聞こえた。
俺のジャージを着こなしたお湯も滴るイケメン不良くんが部屋に入って来たようだ。
一瞥すると本当にカッコイイのなんのって……存在が嫌味だ。
普段も当たり前のようにカッコ良くて、こうやって髪が濡れていてもカッコイイとかどんな嫌味だよ。お前。
「ケイ。これおばちゃんが一緒に食えって」
ヨウの手にはソーダ味らしき水色ボディのアイスが二本握られている。
体を起こした俺はアイスを受け取る。
その際、携帯のことを報告。鞄のことも聞いた。
携帯のことに対しては「サンキュ」、鞄に関しては「明日こっそり取りに行く」、だそうな。
今日の明日だ。
出来ることなら帰りたくないけど、鞄も持たず登校することはさすがに不味い。
親が出勤した後に取りに行くと俺に教えてくれた。
口とは裏腹に、行き辛そうな顔を作っていたから、
「ヨウの部屋を見てみたいなぁ」
遠回し遠回しについて行きたいですアピール。
一人より二人、人数が多くなると気持ちも強くなる気がするだろう?
ヨウはちょっとだけ意外そうな顔を作っていたけど、「来いよ」片親がいたらすぐに出て行くつもりだけどな。条件付で許可をくれた。
「けどケイの部屋みたいに面白いもんはなーんもねぇぜ。物が少ないんだ」
ベッドを背凭れ代わりに、ヨウは敷布団の上に腰を下ろしてアイスを齧る。
俺もベッドの上でアイスを齧って、
「実は隠してあったりして」
現役男子高生らしい質問をぶつけてみる。
ナニを? なんて野暮な質問はナシな方向で! 察してくれ!
だけどヨウの奴、オブラートもヘッタクレもなく「エロ本もAVもねぇよ。親煩ぇし」女子がいたら確実に減点対象だぞ。
お前。オブラートに包めって、おばか。
吹っ掛けた俺も大概でおばかだけどさ!
「そういう系はワタルの家で何回か見せてもらったことあったな。あいつの持っているのはスゲーぞ」
「……なんか、ワタルさんの部屋、恐ろしいと思った俺がいるんだけど」
あの人、マニアックそう……性格が性格だしな。
喧嘩の姿とか目の当たりにしてみ? そりゃーもう、喧嘩のワタルさんの攻撃はえぐいっつーか、恐ろしいっつーか、ドドドドドSつーか。
うぇ……思い出しただけでも背筋に寒気が……いや悪寒が。